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お店のトータルバランスとコンセプト設計

先にお伝えしておきますが、とても当たり前の話をしたいと思っています。
この当たり前はとても大事なことですが、実は体現するのがとても難しいことでもあります。


つい先日、東京都内にあるDJ(ミュージック)BARを3軒ハシゴしました。
この日のコンセプトは”それぞれのお店の目指しているであろう姿を想像し、それに対する一体感を感じよう。”でした。

私はお酒が強い方でもないので、かしこまったカクテルを飲み比べたりはしないのですが、初めていくバーと名の付くお店では必ずジントニックを頼む様にしています。
この日も酔っ払わない様に気をつけながら、1軒目18:30過ぎからスタートしました。

*私の主観であり、感じ方は人それぞれです。今回は自分が同様のお店を出店するにあたり、シビアな目線を持って行ったため、あまり良い内容ではありません。それでお店が特定されてしまうとお店の運営者様に申し訳ないので、ボヤかしてお話ししますことをお許しください。

1軒目
場所:繁華街、比較的新しい商業施設、駅から徒歩3分ほど
設備:クラブ営業可能なレベルの音響と照明機材、広い店内、高い天井
内装:シックな色使いでかっこいい、重厚感もある
ジントニック:1000円

まず最初に訪れたお店です。
ハード面のスペックは申し分ない、というかよくここまでやったなと思えるほどに豪華かつ整ったデザイン。
訪れた時間が早かったこともあり、お客さんは私たちのみ。広いこともあり、お客さんが少ないと落ち着かないのは致し方なし。

DJはいなかったが、かかっている音楽は間違いなく誰かが考えて選曲したであろうもの。
R&BやHIP-HOPが多かったが、耳障りがよく、会話もしやすい。

メニューは豊富だが、バーフードとしては乏しい内容。そしてメニューはかっこいいが、見難い。

ジントニックについて
グラスはよくナイトクラブで見る、落としても割れにくいガラス製のもの。重たく、分厚い。
使われているジンは750mlで800円前後であろうよくあるジン。
1/8カットのライムとキューブアイス。
味は至ってよくあるジントニック。

少なくとも私はこのジントニックを1000円で販売することはできない。
確かに立地もよく、音楽・音響もよく、ソファーの座り心地もいい。
おそらく賃料もべらぼうに高いのだろう。
ただ、それでもなお、このジントニックは1000円ではない。いや、1000円取ってはいけない。
ドリンクの提供までに抱いた期待感が一気に覚めていってしまった。

接客サービスは、店内が広いこともあり、遠くのバーカウンターにスタッフが数名、常連かスタッフか、わからないレベルに打ち解けている方々と談笑している様子が見えた。


2軒目
場所:繁華街の少し奥、店前交通はそこまで多くない二階、駅から徒歩7分ほど
設備:スケルトンかつ吸音をあまりしていないため音の残響がありクリアに音楽を聴けない、一般的な音響機材、ハイテーブルのみ、
内装:全体的にチープさを感じる什器類、カップルシートなどもあり
ジントニック:500円

20時過ぎに訪れた2軒目。
私たち以外のお客さんは2組み、40台女性2名とサラリーマンが1人だった。
正直なところ、ネットで見ていた画像情報と比べ数段落ちるチープさを感じた。店内は広くなく、スケルトンベースで仕上げられた店内では吸音をしっかり考慮しないと厳しいが、まさにそれだった。音は重なり、とてもじゃないが音楽を楽しむ場としては成立していない様に思う。
メニューは大体カラオケ店の様なラインナップ。
DJはHIP-HOPやEDMなどをかけていたが、どんな空間にしたいのかは正直なところわからなかった。
”DJがいる”ということがコンセプトなのだろうか。

ジントニックについて
グラスはよくあるコリンズグラス。キューブアイス。使われているであろうジンは1軒目と同等のもの。ライムなどは入っていない。
味もライム以外1軒目と全く同じに感じる。
ただ、納得感はある。そうだよね。と思える価格と味だった。


3軒目
場所:繁華街、店前交通の多い路面店、駅から徒歩3分ほど
設備:高い天井、どちらかというとカフェな什器類、照明はコンセプトカラーが強い、一般的な音響機材
内装:コンセプトカラーが前面に出ている、金物系の什器
ジントニック:750円

路面店ということもあり、入り口付近にDJもいて、とてもパブリックな雰囲気。
来店時間は平日22時を回っていたが、満席。
客層はというと、一言では表せないくらいにバラバラ。(若いカップルもいれば少し年配な方も、さらに外国人、大学生っぽい方など)

コンセプトカラーが強いため、照明のせいで食事は美味しそうには見えなかった。
ジントニックとフードを一品頼んだが、ドリンクよりもフードが先に来てしまう。そして隣の席に後からきたカップルのドリンクが先に出てしまう。
満席稼働を考えれば仕方ない、とも思いつつ、私ならテーブルにドリンクが乗っていなければ提供時に一声かけるだろう。

DJは女性。
かかっている音楽はEDM、HIP-HOPなど。音量はそこまで大きくないため会話は比較的しやすい。

ジントニックについて
コリンズグラス、キューブアイス、ここのジンもおそらく既出2軒と同様。ライムが入っていた。
750円をとる理由は路面店である立地条件、それ以外は特に思い当たらなかった。



私の様な若輩者がお店を語る様なことをして、まずは申し訳ありません。
ですが、大変勉強になる一夜であったことは間違いありませんでした。

ここからが本題です。


お店を作る上で大切にしなくてはならないこと。
コンセプト設計を大切にし、そこからブレないバランスを保ち続けること。

誰しもお店を作る時に来店されるお客様の顔を思い浮かべ、お店ではどの様にその方々が楽しんでいるかを想像します。
大学生に来てもらいたい飲み屋と、30代の方に来てもらいたい飲み屋では当然ながら全てが違って当たり前なのです。

まずはターゲットをしっかり定め、その方々には何が刺さるのかを考えます。
商品なのか、空間なのか、サービスなのか。それはそれぞれの考えをもとにお店の強みとして強調され、育てられていくのです。

空間もサービスもいいが、商品は一定ラインに達していない。
商品価格が釣り合っていない。
サービスがいいのに空間としてはよくない。
商品はいいが、サービスがよくない。

飲食店をやっていると価格設定について考える機会がしばしばあるわけですが、私が思うやってはいけない思考順序がありまして、それは

・原価から計算すること。
・計画客単価から計算すること。

この二つです。
もちろん、考えなくていいことではなくて、考えの中には入れなくてはならないですが、ここを切り取って考えてしまった時、どうしても原価は抑えたいと考えてしまうし、どうしても計画を成り立たせたいと思ってしまうからです。
そうすると納得感とのバランスが取れなくなります。
そして商品の単価はその商品の数字や完成度だけで成り立っているわけではなく、お店全体で成り立たせるものだからです。

誰に来て欲しいのか、そのペルソナに思いを馳せて、納得し満足してもらえることをお店全体でやる。
だからBGMも、内装も、什器や食器、接客も、全部に理由があり一定のラインのクオリティをつくらなきゃいけないのです。

大型店でもなく大衆店でもないお店では、集客(客層)をコントロールすることがとても大事です。

飛び抜けて良い、飛び抜けて悪い。これは意図しない方向に向かう原因になります。

売上の数字や客数だけに囚われて追いかける様になると、あるべき姿からズレて行ってしまうことが多いです。

狙った客層に浸透させること、狙った客層に納得してもらうこと。
そこに注力し、継続していくこと。


これこそまさに積小為大です。
全てのディテールにこだわり、細やかな気配りをしていく。

当たり前ですが、とても難しく、最重要。
2022年、私たちのお店はそれを絶対にやり切りたいと思っています。


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