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Taiwan studyがどのように自国の問題に接続できるか、植民地文学を通して考える

M1春期セメスターも、はや終わりが見えてきました。今期とった授業は2個のみでしたが、語学学校の授業も入れていたので、ぼちぼち忙しめでした。

春期セメスターの前半では「Taiwan studyがどのように自国の問題に接続できるか」について、ナショナル・アイデンティティの観点から考えました。

かつての台湾と日本。宗主国と従属国という構造への問題提起は、現代における自国のさまざまなマイノリティ・グループや構造と力が持つ問題点に接続することができると考えています。

呉濁流「アジアの孤児」のような植民地時代時代の台湾における文学は、ナショナル・アイデンティティや植民地下の従属国のナショナル・アイデンティティについて考えるきっかけを与えてくれます。

呉濁流「アジアの孤児」

呉濁流氏の自伝的小説、「アジアの孤児」は、植民地時代の台湾から戦後までのナショナル・アイデンティティのゆらぎを鮮明に描いています。同化政策により、日本的であることが正しいとされた時代。現地人が受ける理不尽と、近代としての日本に対する憧れが複雑に絡み合います。日本人としてこの本を読むのは、個人的にかなり辛いものがあります。

一方で、著書のもう一つの面白さは、台湾・日本・中国という三項対立を、男女関係に置き換えて描かれている点です。植民者と被植民者、伝統的な中庸思想と近代化について、男女関係の中で苦悩し、台湾意識を成長させていく。

主人公は、台湾の未開発さを嘆き、近代を感じる日本の女性や、進歩的な南京の街で出会う女性たちに惹かれていきます。それにもかかわらず、伝統的な教育観で育った自分の封建的意識に自覚的であり、主人公の自己矛盾が生き生きと描かれている点が、名作たる所以だと思います。

さらに「アジアの孤児」は、台湾人作家の作品ですが、原作は日本語で書かれています。もし読んだことがなければ、ぜひ手に取ってみてほしいです。

最後に

NHK連続テレビ小説「虎に翼」では、主人公・寅子は「ご婦人は裁判官になれない」という事実に直面し、留学生の崔さんは「朝鮮人は試験に受からない」と差別を受けます。ここに、このアジアの孤児で描かれる苦悩との共通点が見えます。

現代においても、記憶に新しい医学部入試における女性差別問題をはじめ、ジェンダーや国籍、人種に基づく差別は、未だ様々な形で存在しています。

差別けしからん!はもちろんなんですが、なんでそんなことが起こるのか?という点に非常に興味を持っています。今後もそこへの視座を深めていけたらな〜と思っています。

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