見出し画像

コーヒーの時間はコーヒーのことだけを考えて 

 ポーレックスのコーヒーミル

 私が15年以上ほぼ毎朝使っているコーヒーミルはステンレスの筒状で手動で挽くタイプだ。直径45mm程の片手でぎゅっと握り締められる太さだ。
その筒の頭に、取り外し式でブーメランのような形をしたハンドルを引っ掛けて回す。どこにでもコンパクトにしまえるため、狭いキッチンでも邪魔にならない。豆を挽く刃はセラミックでできており、締め付け具合をじわじわと感覚のみで調整し、好みの豆の荒さを狙う。挽いている時は電動タイプと違ってジャリジャリと優しい音がする。メーカーの商品説明によると、刃は分解しやすく清潔に保てるのでいつでもおいしいコーヒーが飲める、ということなのだが、申し訳ない。15年以上使っているが洗った記憶が数回しかない。それでも私は毎朝おいしくコーヒーが飲めているのだ。

 なぜこの習慣がこんなに長く続いているのだろう。

 まず、このコーヒーミルはシンプルな作りなので壊れるところがない。そして洗わないからメンテナンスフリーであること。
もちろんコーヒーが好きなことも大きな理由だ。

 でも一番大切なポイントは他にある。この習慣が自分の精神状態をチェックする儀式になっているということだ。精神状態というと大げさだが、自分がぼんやりしていないかどうか、心ここにあらずの状態になっていないかどうかのチェックである。自分の力加減に、出来栄えが左右される作りになっているため、自ずとそれらが反映されてしまうのである。

 全てが手動であるため、刃の締め具合の微調整を間違えると、豆が結構な粗挽きで出てきてしまう。この時に他のことを考えていると、それに気づかず失敗する。そして粗挽き豆をもう一度ミルのなかに戻して挽き直す羽目になる。ハンドルも要注意だ。普通に回していればなんてことはないのだが、イライラした出来事をふと無意識に思い出し、少しでも負の感情が心をよぎった時はハンドルがポーンと外れてしまい、それがブーメランのように自分に刺さりそうになるのである。

 そんな訳で私は毎朝このステンレスの筒を握りしめ、コーヒーの時間はコーヒーのことだけを考えることにしている。


15年使い続けている ポーレックスのコーヒーミル 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?