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書店で電子書籍を買えるようにすることが、データ時代の切り札になる

書店まで行って、Amazonを開いて検索した、なんてことはないだろうか。

ユーザーはその瞬間に一番便利な方法で本を買う
だから書店でAmazonという流れはすでに書店側では止められない。
ならば、書店で本を購入する体験を一番便利なものに変化させればいい

その方法が、逆説的にも聞こえる『書店で電子書籍を買えるようにする』取り組みです。

今までにも、書店で電子書籍が買えるようにはなっていた

三省堂書店は2013年、BookLive!と組んで『ヨミCam』という、表紙を読み込むことで電子書籍情報を表示できるアプリを出していた。
このアプリでは、電子書籍の検索、書店員のPOP、棚構成のストーリーなどが見られた。

しかし、現在はすでにクローズしており、下のようなキャンペーンとして形を残している。購入までの流れは、

・本のバーコードを専用アプリで読み取る
・レジで代金を支払う

となっている。

これではマズい。
専用アプリでバーコードを読み取るのも面倒だし、レジで代金を支払うのは電子書籍を購入する導線としてあまりにもイケていない。
どういうデータをどのように取り、何に活かすのかを考えることが重要だ。

書店で電子書籍が買える意味

まずやるべきことは、書店で電子書籍を買えるようにするメリットの整理だ。
これはユーザー、書店側のどちらにとっても存在する。

ユーザー側のメリット

・電子書籍ならではの割引価格
・購入した本を持ち帰る必要がない

これらがユーザー側のメリットとして挙げられるだろう。
しかし、実際にはAmazonの利用でも同様のことが言える。
だから、その書店が提携しているECとどれだけシームレスな購入体験を実現できるかが鍵になってくる。

具体的には、現状の『読み込み→リダイレクト→最初の画面』という遷移を繰り返すだけではAmazonの購入体験には到底及ばないと思う。
だから例えば、『ARアプリとして書店内でずっと開いておき、気になった本があれば画角内に収めてタップした瞬間にモーダル表示*1される』
だとか、書店でしかできない体験は必要になる。

書店側のメリット

書店側のメリットはユーザーに比べてかなり大きく、以下の3つに別れる。

・在庫リスクが減る
・紙か電子書籍のどちらで買われる本なのかがわかる
・『どこに書店を展開すればいいのか』がわかる

どういうことなのかを理解するために、現状を整理する。

現状
・その書店から売れた紙の書籍のデータしかない
・ある本が紙+電子でどれだけ売れ、そのうちの紙の割合がどれだけかがわからない
・どういう年齢層の人が書店に来ているのかがわからない

これが、『その書店を通して買われた紙・電子書籍の売り上げのデータを、ユーザータグのついた状態で全て取ることができる』理想的な状況になると、

理想
・その書店から売れた紙と電子のデータがある
・ある本がその書店で、紙+電子でどれだけ売れるか、さらにどんな割合で売れるかが予測できる
  ◦ だから、紙の本をどれだけ置けばいいのかが事前にわかる
・どういう年齢層の人がどれだけその書店に来ているのかがわかる
  ◦ だから、どこに書店を置けばどういう年齢層の人がどれだけくるのかがわかる

となる。
この、リアルな書店の位置に基づいたデータというのは、Amazonでも持っていない非常に価値のあるデータだ。


ユーザーとのタッチポイントにおいて、誰も取れていないデータをとることができる状態を確保することは、データ時代における最重要課題だ。
だから、書店は電子書籍を店頭で販売することで、それに必要なデータを取得できるのであれば何があっても突っ込んでいく必要がある。
僕はそう思っている。


終わりに

2018年、紙の書籍の市場は1兆3000億円であるのに対して電子書籍の市場は2500億円ほど*2だ。
紙の市場規模が縮小し続け、電子が拡大していると言われて久しいが、まだまだ紙は売れている。
だからこそ今から、このシェアの合計や、割合がどこにいきつくのかを、書店という側から把握しようとするアプローチが必要なのではないかと思う。



*1 モーダル表示とは、以下の写真のような表示方法。


*2 2018年の出版市場規模発表


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