見出し画像

スマイルカットへの問題点

先日、報道特集で、発達障がい児の散髪「スマイルカット」に取り組んでいる理容美容師の赤松氏が紹介されていました。

82歳で現役理容師の父と、この番組を見終えて意見交換になった。

昔は発達障害という言葉は社会的に知られていなくて、床屋に来ても奇声をあげて全然切らせてくれない子供が少なくはなかったなぁと。

父曰く、押さえつけないように、お店の中にいる時は自由にさせて、椅子がたくさんあるから子供は面白がって椅子を飛び移り、そこをハサミと櫛を持ちながら追いかけて宥(なだ)めながらカットしてたそうだ。

ただ、そうやって汗をかきながらカットしても、お母さんから「背中に髪の毛が入ってるじゃない!チクチク痒がってるでしょ」と怒られ、それから、お断りするようになったと。

もう少し、理容師側の気持ち、「なんとかカットしてあげたい、どうせ切るなら綺麗に可愛くカッコよく切ってあげたい」も、お母さん側も理解をしてほしいもにです。背中に一本も刈り毛が入らないようにカットするのは無理だろうと、思い返すように話しをしてくれました。

この代表の赤松氏は、本当に凄い。大学院まで行って、本当に発達障がい児について真剣に取り組んでいらっしゃる。

私事ですが、30年も前には精神病院内の閉鎖病棟にボランティアヘアカットに行ったり、サロン内でも自閉症児や発達障がい児のお子さんを担当させてもらっていた。

大型店で働いていた時も、小さな乳幼児のカットは自動的に僕が担当で、いつの間にか「子供とお年寄り担当」になっていた。

詳しくは、こちらの記事へ

僕の過去30年の経験からみても、このスマイルカットの取り組みは、本当に覚悟がないとできないし、生半可な気持ちではできない。この「そらいろプロジェクト京都」は凄いしか言えないし、感動すら覚える。

たった一つ、問題点がある。

スマイルカットの取り組みや、赤松氏にではない。

社会に対して、行政に対してだ。

僕は海外の白人社会の中で長い間仕事をしていたせいなのか、資本主義、合理主義的な考えになってしまうのだが…

どんな職業でも、最低60分=6,000円(税別)で料金を頂くべきだと思っている。保険の利かない整体師や美容のエステだって、60分で1万円なんて、今となっては普通で驚きもしない。

なのに、美容室では60分=6,000円を頂いているところは非常に少ない。

ましてや、スマイルカットでは、60分6,000円なんて頂いていない。

例えば、サロンの中に入れず、一緒に公園であやしながら、1時間が発生したら、最低でも6,600円(税込み)は頂くべき。

美容師さん側は、一生懸命、この発達障がい児のお子さんについてプライベートの時間を削って勉強をしている。

いろいろとスマイルカットについてリサーチしてみると、カットを終えたか終えないかは関係なく、とにかく関わった時間で料金が発生する仕組みで、1時間4,000円というサロンもあるようだ。

まずはお子さんに美容師とサロンの店内の空間に慣れさせる。美容師側の時間を費やして、一生懸命に取り組んでいるのだから、そこは料金は発生するべき。

お子さんの親御さんも、そこは理解して尊重して、お支払いするべき…なのだが、

そこで行政があると思っている。そのために行政があるのではないか。

障がいを持つ親御さんに負担をかけないように、税金で負担をする仕組みが必要だ。

このスマイルカットは、色々と表彰されているようだけれど、感謝状と粗品で終わらせず、福祉の一環で予算を出して、美容師側も親御さん側もみんなが笑顔になるために、税金をきちんと使って欲しい。

美容業界の将来を考えるとき、技術と料金の等価交換は正しくないと成り立たないと思う。

社会も職人達にリスペクトし、良いものには笑顔で料金を払う社会になって欲しい。「安くて良いもの」は誰かが裏で泣いているのを忘れないようにしたい。

お金を頂くのは悪ではない。きちんと技術と経験を持った職人達と等価交換ができないのは悪だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?