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編集者から見たヨビノリ~➀始めたワケ~

「大学レベルの数学や物理を解説するYouTubeチャンネルを始めたい」

たくみさんからこの話を聞いたとき、僕は複雑な心境だった。
大学レベルの数学や物理を解説するYouTubeチャンネルだと?高校生向けの数学を解説するYouTubeチャンネルのトップですら数万人の登録者しかいないこの時代に大学生レベルの動画を見る人が一体どれほどいるというのだ。

チャンネル登録者が伸びているYouTuberというのは、多彩な企画を繰り出す発想の天才、非現実的な世界を魅せてくれるお金持ち、そして圧倒的なルックスの持ち主だと僕は思っていた。

無理だ。たくみさんはアキネーター似のアンパンマンなのだ

僕の思いを掬ったようにたくみさんはざっくりと期待されるチャンネル登録者数を語りだした。

「かなり上手く行っても2万人」

無理だ。仮に2万人行ったところで超底辺YouTuberじゃないか。小学生がなりたい職業のYouTuberなんて夢のまた夢だ。そもそも職業と呼べるレベルじゃない。間違いなく赤字経営だ。

しかし僕は気づいたらこう答えていた。

「面白いじゃないですか。編集やればいいですか?」

バカだ。自分で言っといてバカだろう。

しかし、もはや赤字などということは僕は気にしていなかった。僕にとって重要だったのは、大学教育を変えるというたくみさんの考えのほうだ。

僕は高校時代、必死に努力して東工大の理学部に合格した。なのに、その東工大での講義はひどく退屈なものだった。なにもわからないのだ。あれだけ好きだった物理や数学が、急にそっぽを向いたように僕から離れていった。

大学に入学してからしばらく経つと、大学での勉強の仕方が分かってきた。物理や数学の前に分かる必要があったのは勉強の仕方のほうだった。大学の教員というのは研究をするために雇われているのであって、講義をするためではない。講義が分かりにくいからといってクビにする大学なんか存在しない。この高校とのギャップに気づくのに僕は半年はかかった。

こういう状況をなんとかしたいと思ってはいた。でもそんなことできないだろう。ほとんどあきらめていた。

そんなときにたくみさんに誘われた。僕とたくみさんが出会っていたのは運命だったのかもしれない。

これはもう、やるしかない。


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