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生成AI開発で未来を変えるGPUクラスタ

 私は、ネットワーク、サーバ、セキュリティ等のインフラ技術に加えて、アプリケーション開発のノウハウを持ち合わせており、様々な企業のシステムの設計及び構築やコンサルティングを幅広く実施するシステムエンジニアとして、日々新しい技術を探求し続けています。
 近年、目覚ましい進歩を遂げている生成AIは、創作活動や研究開発など、様々な分野に革新をもたらす可能性を秘めています。その生成AI開発をさらに加速させるためには、より多くの計算資源が必要となります。
 そこで注目されるのが、複数のGPUを連携させることで圧倒的な処理能力を実現する「GPUクラスタ」です。

ITの総合格闘技

 しかし、GPUクラスタ構築は、単に高性能なGPUを揃えれば良いというものではありません。
 マルチノード且つ大量のGPUで構成されたクラスタを構築するには、サーバーだけでなく、ノード間通信を高速化するためのインターコネクトやストレージ、計算リソースやジョブを管理するためのマネジメントツールなど、ハードウェアからソフトウェア、ネットワークまでを組み合わせ、チューニングすることで最大限にパフォーマンスを引き出さなければならず、様々な要素を考慮した設計力と、高度な技術力が必要となる正しく「総合格闘技」です。

未知の領域への挑戦

 OpenAIよりChatGPTが2022年11月末にリリースされ、世間が生成AIの可能性に驚いた当時、私はGPUクラスタに関する知識はほとんど持っていませんでした。ネットワークやサーバー、セキュリティの設計・構築、アプリケーション開発まであらゆる業務を経験してきましたが、ChatGPT登場以前では、1つのノードで収まらないような大量のGPUメモリを必要とするアプリケーション開発を行う企業は限定的であり、GPUクラスタは限られた企業にしか必要とされておらず、今まで業務で関わることが無かった為です。
 ドラえもんやロックマンエグゼと幼少期を共にした私としては、夢にまでみた世界がすぐそこまで迫ってきている事に興奮し、自分の強みを活かして生成AIという未来を切り開く技術に貢献したいという強い思いから、果敢に挑戦することを決意したのを今でもよく覚えています。

壁を乗り越えて見えてきた景色

 まずは、社内にもノウハウが無い領域であるため、専門書籍やオンラインチュートリアルを読み漁り、基礎となる知識を積み重ねました。そして、実際にゼロから検証環境を構築し、実際に手を動かしながら試行錯誤を繰り返しました。中々思ったように動作せず、何度も壁にぶち当たりながら、それでも諦めずに解決策を探し、トライ・アンド・エラーを何度も何度も繰り返し続けました。平日の子供が寝静まった後や、休日も家族に協力してもらい検証するための時間をもらったりと、とにかく検証のための時間を作る事を意識して何ヶ月も過ごしました。「自分で実際に手を動かさないエンジニアはエンジニアではない」と何度も自分に言い聞かせ、完全に動作するまで解決策を探し続けました。
 2023年9月、ついに努力が実り、膨大な数のNVIDIA A100やH100で構成されるGPUクラスタを構築することに成功しました。それが、NTT人間情報研究所が発表した、大規模言語モデル「tsuzumi」の研究開発基盤となっています。
 tsuzumiの記者会見には心躍りました。私の検証に費やした日々は無駄では無かったんだなと。研究者のようにモデルそのものを開発する訳ではありませんが、インフラ技術という自分の強みを活かして、未来を切り開く技術に貢献できているという満足感は、今までの苦労を忘れさせるには十分でした。

GPUクラスタは未来を変える基盤

 GPUクラスタ構築は、決して簡単なものではありません。しかし、それを成し遂げることで、得られるものは非常に大きい。それは、新しいスキル、新しい知識、そして未来を変える可能性です。
 もしあなたが、生成AIという可能性と共に、未来を切り開きたいと願っているなら、GPUクラスタについても興味を持ってもらえると非常に嬉しいです。

GPUクラスタ構築に必要なスキル

 GPUクラスタに必要なスキルを解説します。これらのスキルは、単独で存在するのではなく、相互に関連し、補完し合う関係にあります。

1. ハードウェア

  • GPUアーキテクチャ:各世代のGPUアーキテクチャの特徴、性能、消費電力などを理解し、用途に合ったGPUを選択する必要があります。

  • ネットワーク:InfiniBand、Ethernet、RoCEv2などのネットワーク技術を理解し、高速かつ低遅延な通信を実現する必要があります。

  • ストレージ:SSD、NVMe、Lustre、NFS over RDMAなどのストレージ技術を理解し、大規模なデータセットを効率的に処理する必要があります。

  • サーバ:CPU、メモリ、電源などのサーバ構成要素を理解し、GPUクラスタ全体の性能を最適化する必要があります。

2. ソフトウェア

  • Linux:GPUクラスタの基盤となるOSであるLinuxを深く理解し、各種設定やトラブルシューティングを行う必要があります。

  • コンテナ技術:Dockerなどのコンテナ技術を用いて、GPUクラスタの環境を構築・運用する必要があります。

  • ジョブ管理システム:Slurmなどのジョブ管理システムを用いて、GPUクラスタ上のジョブを効率的に管理する必要があります。

  • 並列処理プログラミング:OpenMPIなどの並列処理プログラミング言語を用いたアプリケーションが、GPUクラスタ上で動作するように構築する必要があります。

  • ディープラーニングフレームワーク:TensorFlow、PyTorchなどのディープラーニングフレームワークを理解し、用途に合わせた設計を行う必要があります。

3. その他

  • パフォーマンス分析:HPCGやHPL-MxPなどのベンチマークツールを用いて、GPUクラスタの性能を分析し、改善する必要があります。

  • トラブルシューティング:GPUクラスタは複雑なシステムであるため、発生する様々なトラブルを迅速に解決する必要があります。

  • セキュリティ:GPUクラスタは貴重なデータやリソースを扱うため、セキュリティ対策を講じる必要があります。

  • エアフロー:GPUクラスタのパフォーマンスを最大限に引き出すにはGPUをしっかりと冷却する必要があります。

できっこないをやらなくちゃ

 GPUクラスタ構築は、上記のように様々なスキルを必要とするため、決して簡単ではありませんが、それだけの価値のあるスキルです。このスキルを習得することで、あなたは生成AIという可能性と共に、未来に名前を残すような、社会に大きな影響を与える仕事ができるかもしれません。どうですか、ワクワクしてきませんか? 




だからこそ、できっこないをやりましょう。




GPUクラスタ構築のノウハウを公開中

 弊社のGPUクラスタに関するノウハウを下記のサイトで一部公開中です。本投稿でGPUクラスタに興味を持った方は是非読んで頂けると嬉しいです。
 生成AI/LLMの開発を加速するGPUクラスタ
 ・Vol.1 前編:マルチノードGPUシステムとインターコネクト
 ・Vol.1 後編:インターコネクトのトポロジーとシステム構成
 ・Vol.2:NVIDIA Base Command ManagerによるGPUクラスタの運用管理

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