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滋賀県 コロナ対策の一環として借り上げた青年会館の契約に関する住民監査請求【一部棄却、一部却下】


1. 事案の概要

滋賀県が新型コロナウイルス感染症対策の一環として、2022年度に一般財団法人滋賀県青年会館から宿泊施設及び会議室を借り上げる契約を締結し、年間1,095万円を支払った。しかし、実際にはその宿泊施設及び会議室を使用せず、子供の一時保護の実績がないまま全額を支払ったとされる。請求人はこの支出が違法であると主張し、損害賠償を求めて住民監査請求を行った。

2. 請求人の主張

請求人は以下の点を主張した:

  1. 2022年度、青年会館の宿泊施設及び会議室は全く使用されなかったにもかかわらず、1,095万円を支払ったのは違法である。

  2. 前年度(2021年度)の実績を踏まえれば、2022年度の契約は見直すべきであり、必要な時にのみ借り上げる方式に変更するべきであった。

  3. 会議室を借り上げる必要は全くなく、2022年度の会議室支出は無駄である。

  4. 契約書第4条に基づけば、予約した日数のみの支払いが必要であり、全期間分の支払いは不当である 。

3. 滋賀県の反論

滋賀県は以下の反論を行った:

  1. 青年会館の借り上げは、児童福祉法に基づく一時保護所のサテライト施設として、コロナ感染家庭の子供を迅速に受け入れるためのものであった。恒常的・継続的な使用を前提としており、必要に応じてすぐに使用できる状態を保つため、全額を支払うことが必要だった。

  2. 会議室は、保護した子供のケアに従事する職員のためのスタッフルームとして使用されており、その確保は必要不可欠であった。

  3. 契約書第4条の記載については、契約全体の趣旨として恒常的な施設確保を意味しており、使用実績に基づく支払いではないとの認識であり、これについて青年会館とも共通の理解があった 。

4. 監査委員の監査結果

監査委員の結果は以下の通りである:

  1. 契約の内容は、施設全体を恒常的に使用することを前提としており、実際の使用実績にかかわらず全額を支払うことが妥当であると判断された。

  2. 前年度の実績を踏まえた契約見直しの必要性については、コロナ感染動向の予測困難性や感染拡大防止の観点から、施設を事前に確保しておく必要があり、県の判断は妥当であるとされた。

  3. 会議室の借り上げも職員の業務遂行に必要なものであり、その確保は合理的であると認められた。

  4. 契約書第4条の記載については、記載内容と実際の契約運用に整合性がない点があったものの、契約全体として違法性はないと結論付けられた  。

以上の結果、請求人の主張は認められず、監査請求は棄却された。滋賀県の契約及び支出について違法性は認められないと判断された。