争う相手はここにいない

安井コラム 2022/3/8

まさに今日起こったくだらない出来事。電車内でおじさん2人が怒鳴り散らし、吹っ飛ばし合う喧嘩。原因はどっちが先にぶつかっただのどうのという感じ。侵攻や戦争という武力を中心においた考えには100%同意できないが、価値観の衝突がもたらす出来事よりも、この出来事は不愉快な感じがした。

しかし武力での争いを避けなければならない一方、僕らは資本主義という文脈で競争社会に住んでいる。資本主義での勝者は人口にとても密に関わっているわけだが、僕らが住む日本は少子高齢化が進み、人口という成長の源を期待することができない。

Japan as No1と謳われた1980年代。あの頃のように、いやこのまま右肩下がりにならないようにするにはどうしたら良いのだろうかと考えてみたが、この2つしか思いつかない。

それは「非凡な人材たちが創り出すイノベーション」と「束の凡人が繰り出す援護攻撃」である。

1つ目は日本が純粋な足し算で勝てなくなった今、掛け算をするしかないという考え。そしてその掛け算の質も高めなければいけない。なぜなら世界には才能あふれる人が野心を持って何かに取り組んでいる。イーロンマスクのように。販売台数では圧倒的に少ないテスラの時価総額はついにトヨタを越えた。イノベーションへの期待が高まり、お金が集まることで、期待が現実に変わろうとしている。

そんな自動車業界で、小島プレス工業へのサイバー攻撃と同じくらい、ソニーとホンダの協業というニュースが今週のビックニュースだろう。

才能・経験・暗黙知を共有することで掛け算の質を高め、世界の強豪たちと戦おうとしている。ソニーもホンダも1社で何とでもなりそうという考えを持つのが一般的な日本人の考えだと思われる。EV化の流れに圧倒的に遅れ、自動車大国の日本の地位はかなり危ない。日本では全就業人口の約1割にあたる529万人もの人が自動車産業に携わっていると言われ、これが崩れてしまうと、奈落の底に落とされてしまう。敵はトヨタや日産ではない。

ボディーブローのように、徐々に数と質が弱っていく中で、協業がキーとなるのは間違いないだろう。しかし、このヤマダとAmazonの協業にはあまり賛成できない。それはたとえ販売が上向きになっても、その旨味を海外の企業と分け合うことになるからだ。このことは本来日本で回るはずのお金が、外部に流出していることを差し、経済の血が日本国内で回らないからだ。

そして、2つ目の「束の凡人が繰り出す援護攻撃」というちょっと意味不明ぽいことを説明するために例を。

多くの人が便利なAmazonのプライム会員になっているだろう。あなたがAmazonで注文したその商品は、本当に明日到着する必要があるだろうか?また、近所の本屋さんで買える雑誌や本を、Amazonで買っていないだろうか?

論理は前述のヤマダとAmazonの協業の話と同じで、ちょっと大げさに言うと、それらの行為は経済がうまく回るためのお金を外部に差し出し、成長の原資を自ら手放している。

これは数か月前にふと考えたことで、Amazon Primeに入らなくても何も生活に困らないなと整理がつき、解約しようと思っている。早く年間契約の期日が終わってほしいな。といった感じで、凡人の僕らはただただ没落していくのを見ているのではなく、まだできることがある。その一つが海外のサービスやモノを買うのではなく、日本品を応援して買うことだ。

争う相手はここにいない。今日起きたしょうもない電車の喧嘩から、まさか日本の経済を少しでも良くするニュースと僕らのちょっとした行動改善の話に繋がるとは思わなかったな。

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