見出し画像

きちんと学習・宅建過去問6【権利関係・令和元年2-2】

【問 2】 AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
2 AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。

画像1

【思考プロセスを簡単に】
(1)取消と登記の問題。選択肢1とは対照的に、本問は、取消前の第三者であるCにAが登記なく、自己の所有権を主張できるかという問題。
(2)判例は、取消前の第三者との関係では、取消権を行使した者は登記がなくても自己の所有権の帰属を主張することができるという立場。ただし、詐欺取消しの場合には、96条3項に基づいて、善意無過失の第三者には(取消そのものを)主張できないという立場(大判昭和17・9・30)。
(3)本問では、Aは、詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意であったCに対して、登記なく自己の所有権を主張することができる。
(4)よって、AはCに対して、所有権に基づいて、甲土地の返還を請求することができる。⇒この選択肢は「正」

【解説】
 選択肢1の繰り返しになりますが、上の図で、③AがBの詐欺を理由として、AB間の売買契約を取り消した場合(96条1項)、AB間の売買契約は、「初めから無効であったものとみな」されます(121条)。わかりやすくいうと、AからBに甲土地所有権は移転していなかったことになります。そうすると、BからCへの所有権の移転も(Bは甲土地の所有権を取得していなかったのですから)なかったことになるはずです。

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 〔以下、略〕

(取消しの効果)
第121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

 しかし、これでは、たとえば、第三者のCが(本問とは異なり)AB間の契約は有効だと信じて(→善意無過失で)Bと甲土地の売買契約を締結した場合に、Cに不測の損害を与えてしまいます(第三者はいわば「後出しの取消し」により所有権を取得できなくなってしまうわけですよね)。

 そこで、民法は、このようなCを保護し取引の安全を図るため、96条3項という規定を設けています(→96条3項は、取消しに遡及効があることにより第三者が不測の損害を被るのを防ぐ趣旨の規定といえます。その意味は解説で述べてきたとおりです)。

(詐欺又は強迫)
第96条
 〔1項、2項を省略〕
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 もっとも、本問では、Cは「悪意」ですから、96条3項の保護を受けることはできません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?