コロナ禍がもたらしたモノ・コト~その2~

緊急事態宣言は解除されたものの、全国的に、いや全世界的に3密を避ける空気はそのまま色濃く世の中を覆い続けた。7月以降、ぽつりぽつりと研修やコンサルのオーダーは入るようになったものの、以前の五分の一程度。キャンセルの際、中止ではなく延期とおっしゃっていたクライアントも、大方が「今年度中はちょっと様子を見たい・・・」となった。それはそうであろう。以前は生保業界で働いていたし、今は教育分野に携わっているが、保険も教育も、重要性は極めて高いが緊急性は“低い”と思われがちな商品の代表選手である。リーマンショックやパンデミックなどにより経済が危機に陥ると、真っ先に整理の対象にされがちだ。

そんなさなか、私は重要なことに気づくことができた。そしてそれを転機に自分の心の中の雲はグングンと晴れていった。

8月のあるとても暑い日、ある小さなクライアントと仕事をした。研修及び定着のためのコンサルティングをミックスしたような案件であった。金額的にはとても小規模な案件で、これまでの莫大なキャンセルから比べれば、収益的には“焼け石に水”さながらの仕事であった。しかしこのクライアントとは約3年ぶりの取組みであり、研修の受講者たちの大半とはとても懐かしい対面だった。が、彼らは懐かしいだけではなかったのだ・・・。

研修が始まってすぐに気づいたのは、彼らの成長であった。顔かたちや口調など、表面的な特徴は何が変わったわけでもない。けれども中身は大きく変わっていた。ある人は以前は自分の仕事のことで精いっぱいだったのが、周囲や後輩のことを気にかけるようになっていた。ある人はCSマインドが劇的に高まっていて、発言が自分視点から顧客視点に切り替わっていた。そしてある人は、3年前はまだ仕事に慣れてさえいなかったのに、今はリーダーシップを発揮し全体を引っ張っていた。

私は喜びと同時に恥ずかしさを感じるといった、奇妙な心情に浸されていった。彼らに比べ自分はいったいどれくらい成長したのだろうか?彼らは3年前の私と比べ、私の成長を見出し得るのだろうか?こう思っているうちに自分の心の中にメラメラとファイトの気持ちが沸き上がってきた。「彼らに負けてはいられない。教育を通じて人の成長を支援するプロの私が、自分の成長を置き去りにしているなんて!!」

ところがこの時、私の中にもう一つの疑問が生じた。自分で自分の成長に疑いを持ったが、かといってこの3年、自分は努力しなかったわけではない。それどころか、死に物狂いで事業に取り組んできたという自負さえある。なのになぜ、彼ら受講者に誇れるくらい成長したという実感を持てないのか?自分は果たして、事業の何に対して死に物狂いに取り組んでいたんだろう?自分は何か間違った方向に努力してしまっていたのではないか・・・?と、ここまで考えた時、私は自分が知らず知らず「経営の落とし穴」に陥っていたことに思い当たったのだ。

つづく


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