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「雨にキッスの花束を(絶対約束だよ?)」


あぁ
どうしよ~

友達の美咲が
近くのケーキ屋まで来ていると連絡が
やばっ

ねぇあのね
友達の美咲が近くまで来てるから
今からうち来るって

美咲のやつ
彼氏が出来たけど
紹介しないから
狙って来たな?

どうしよ~
ねぇ、早く服を着て!

昨日から泊りに来ている彼
遅く起きた二人は
下着の上にシャツだけ羽織っている

夜の余韻を残して
めっちゃラフな格好の二人♪

慌てて服を着る二人

あっそうだ!

私は着替えている彼に向かって話す

私が甘えん坊なこととか
絶対秘密だよっ!?

女友達の前だと
ドライで男気のあるタイプで
演じている

だけど
彼の前だとでれでれアマアマになる私

約束だよ?
恥ずかしいんだから

彼も笑って
「分かった、分かった」と言ってくれた

着替え終わった頃
美咲がドアホンを鳴らした

「こんにちは~、突然、ごめんね~
近くまで来たもんやったから」

私は美咲を玄関で迎える
美咲の目は目敏く玄関の靴を探している
そして、美咲‘s eye は、
彼の靴を発見したのだった!

「おっ!、男物の靴、あるやん? 
もしかして、お邪魔な時に来たん、私?」

大学の同級生で関西出身の美咲
とぼけた突っ込みキャラだ

(狙って来たくせに)

まぁ、仕方ないなぁ
美咲になかなか会わせない私も悪かったんだし

「お邪魔なら、帰ろか?」

彼女は私の表情を読み取ろうとしている
美咲は人の気持ちを踏みにじることは
しないんだ

「ううん。彼は来ているけど、
丁度よかった。美咲に紹介したいと
思ってたから。上がって」

「ほんま、ええん?」
「うん、いいよ。彼も気さくな人だし。
どうぞ、どうぞ」
私は、手招きをしながらそう言う

美咲は、靴を脱いで
買って来たケーキの箱を渡しながら
家に入ってきた

ダイニングテーブルの前で立って迎える彼

自己紹介が終わって
美咲と彼はテーブルに着く
私は、台所でコーヒーの準備

でも私は
美咲と彼の話を全力で聞き耳を立てていた

「いつも葵がお世話になっています」
って、あんたは私の姉ちゃんか?

「いえいえ。美咲さんのことは
葵さんからいつも聞いていますよ。」

「えっ。葵、どんな風に私のこと
言っとるんです?」

彼はすこし間を置いて答える
「優しくて楽しくて頼りになる
無二の親友だと」

よしよし
無難で良い答えじゃないか

私はコーヒーを入れて
美咲が買って来たケーキと一緒に
持っていく

「お待たせ~」

テーブルの窓側に美咲
反対側に彼と私
小姑に尋問を受けるような配席だな

ケーキを食べながら
無難な話をしていたが
突然、美咲が彼にこう聞いてきた

「ところで、友幸さんは、葵のこと
どんな感じでお付き合いされてるんです?」

?!
って、あんたっ!

何を聞いてるの急に
彼も固まっているじゃん!

彼も答えに困っているよう

だけど
一瞬、少し笑って
和やかな顔でこう言った

「結婚を考えながら、
お付き合いをさせて頂いています!」

「えっ~?」
声にならない声をあげる美咲と私

いやいや
私「結婚」なんて言葉
一言も聞いたことないんですけど?

そりゃ私も年頃だし
「もしかしたら彼と・・」

なんてことは時々?
いや頻繁に?
考えることはある

でも一向にそんなことを言わないし
寂しく感じている私がいた

「えっ、本気ですか?」
と美咲

私も心の中でその質問に
(うんうん)
と頷きながら彼の答えを待つ

「ええ。もちろん、本気ですよ
葵さんと出逢った時から、
結婚を意識しながら
お付き合いさせて頂いています」

って、突然、私の家を訪れて
二人の唯ならぬ関係を見られた
親を相手ではなく
なんで、美咲にそういうこと言うのかね?

でも、美咲は無二の親友だし
私のことを
男運の無かった私のことを
心配してくれていたから
単刀直入に聞いて
彼もその美咲に
真正面から答えてくれたんだと思った

私は美咲の前だけど
嬉しくて溜まらなくなって
涙ぐみながら彼に抱きついて
そして彼の頬にキスをした

私の頭の中では
今井美樹の「雨にキッスの花束を」
の一節が流れていた

突然アイツが言った
「結婚しようよ、すぐに」
大好きだったのずっと 
ほんとは待ってたんだ
こんなに気の強い女 
ねぇ本当に私でいいの?

YESをこめて涙に濡れた口づけの花束を
(やっと言ったなコイツ。もう離れないから)

一生一度の思い出 幸せにして 
あなたが好き
CHU! CHU!

部屋の中 美咲は息をひそめて 
そして微笑みながら
今 私達二人を見つめているよ♪

ねぇ
絶対約束だよっ

(Fin)

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