夕日に別れを告げて
曲っていうのはホント、個人によって解釈はさまざまで、自分の都合のいいように、歌詞が記憶をたどって行き、せつないメロディが心に語りかける。
この曲を聴くと、あの夏の彼女との忘れられない一日が、いまでも鮮やかに心によみがえるんだ。
She was in love with me one day.
「夕陽に別れを告げて~メリーゴーランド」より
彼女はぼくの初恋の人。
いや、厳密に言うと初恋じゃないかもしれない。
それまでに好きになった人も何人か居るし、ぼくのことを好きでいてくれた子が、それを作文にしてしまうという照れくさい思い出もある。
でも、初恋といえば彼女なんだ。
きっかけは小6の時で、席が隣になった事で、とても積極的な子だった。
ぼくに興味をもったらしく、いくつか質問を紙に書いてよこしてきた。
その中のひとつに、
「自分の親のことをどう思うか?」
とあり、
「べつになんとも思わない」
的な事を返した。
ぼくが子供すぎたのか、彼女が進んでいたのか、今思えば成長の男女差なのだろうけど、少し彼女をがっかりさせてしまったようだった。
その後、交換日記をやったりもしたけど、ちょうど思春期のはじめで、他の女の子にも興味はあったりして、いろいろな出来事が結果的に、彼女をぼくから遠ざけてしまった。
そして、バレンタインにはチョコは彼女からはもらえず、貰ったには貰ったけど、それはだいぶ日にちが経ってからだった。
やがて中学に入り、クラスは離れたけど、部活は同じ。
微妙な距離に、やっぱり好きなんだって事を気づかされた。
惹かれていく気持ちは、もはやどうにもならない。
中学の三年間の間に何度か近付くチャンスや、気持ちを伝えようした事はあったけど、結局は好きになったり、あきらめたりのくりかえしで想いをとげる事はできなかった。
そして卒業、高校は離れ離れになった。
高校生になってからのぼくは、彼女の事は次第に考えなくなっていた。
恋愛のチャンスは中学より確実に増えて、見た目だけちょっと似た人と付き合ってみたり、いろいろな人とデートしたりもしたけど、結局長続きはしなかった。
そして高3の夏に、突然チャンスはやってきた。
運命か、偶然のイタズラか、駅でバッタリ。
何をどうしてどう約束したのか・・遊園地に一緒に行こうよって事になった。
一日をぼくと過ごしてくれるなんて・・・ありえない話。 夢に迄見た。
約束の当日・・なんかこう、やっぱり照れるな・・・
何年も思い続けた人だったから・・でも冷静をよそおう。
いいなぁ、彼女は変わってない。 思ってた通りだ。
これから付き合うとかそういうのは全然ナシ。
不文律で共通の認識。 暗黙の了解。
手すらつなげなかったけど、いろいろな話が出来て、長年の空白が一気に満たされた気がした。
そうして、あっという間に一日は終わる。
時を経て、すこし大人になった彼女とぼく。
彼女の成長にちょっとだけ追いついた自分を感じた。
待ち合わせた駅でサヨナラをする時、勇気を振り絞って最後に彼女の手を握り締めた。
そういえば、写真を一緒に撮ったっけ。
あの暑い遊園地での夏の一瞬をさっくり。
照れくさそうなぼくと微笑んだ彼女が並んで写っている。
She was in love with me one day.
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