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デンマークデザインセンターからの学び

「デンマーク・コペンハーゲンはソーシャルイノベーションデザイン先導都市でありでテク人財輩出の街」──。イノベーション国際競争力の上位国であるスカンジナビア諸国のひとつデンマークには、日本はもとより米国にもない新たな取り組みを知ることができた。訪問先のひとつのデンマークデザインセンターの情報をレポートする。

[サマリー]

DXの推進国家デンマークは世界デジタルランキング4位であり、92%企業がデザインを戦略的に使用しており、64%は、今後5年間でデザインがより重要な競争要因になると予想していた。その中核都市コペンハーゲンはソーシャルイノベーションデザイン基盤としたデジタルトランスフォーメーションデザイン先導都市であり、その中核の役割であるデンマークデザインセンターを訪問した。

https://danskdesigncenter.dk/en/frontpage

[レポート]
そのデンマークデザインセンターは、デンマークのビジネスと産業のデザインの価値を促進のため、3つの役割を担っている機関でした。
1つは、健康、イノベーション、都市などの分野で、公的および民間の関係者のための多くのイニシアチブと連携する。
2つ目は、企業や組織に、デザインの方法を提供しながら、デザインの実践がどのようにイノベーションと開発を促進できるかを試行錯誤する機会を提供する。
3つ目は デザインへの投資の適格性確認やデザイナーの採用を支援し、すべての関係者がデザインの世界をナビゲートできるよう支援しながら、設計を通じて、事業開発と革新のためのツール、知識、インスピレーションへのアクセスの機会を提供する。

これらの役割を通じて、企業や組織は、たとえばデンマークデザイン賞などの大規模なコミュニケーションイニシアチブを通じて、自分の努力をデザインと共有し、他の人から学ぶことができます。デザインツールはオープンソースになっています。

https://danskdesigncenter.dk/en/toolbox

DBICの横塚さんのレポート

既存ビジネスを再デザインしたら、イノベーションになった

https://www.dbic.jp/blog/c201901015/

デンマークデザインセンター2018年のレポートによると

先進国の中で異彩を放つ北欧デンマーク。この小さな国には情報化がさらに進んだ未来のヒントが詰まっている。

デンマークの企業の54%は、設計を体系的に使用していると述べている

これらの経験の75%は、デザインが経済的な最終利益にプラスの影響を与えるというものです。 デザインを戦略的に使用する企業の場合、その数は92%です

過去5年間でデザインが経済的な収益に大きく影響を与えたという50%の経験

64%は、今後5年間でデザインがより重要な競争要因になると予想している

デザインがブランドを強化する79%の経験

デザインが競争力を強化する67%の経験

設計が顧客満足度を高める65%の経験

77%が、設計に関する決定はCxO幹部レベルで行われると述べられている

何故このような価値観で生みだされたのか、その背景に触れることができた。

【背景】
「デンマークは福祉国家なのになぜ国際競争力が高いのか?」

デンマークの一人あたりの名目GDPは、日本の約1.7倍。福祉国家として国内での競争が少ないのに、国際競争力は世界トップクラスである。この国はなぜこんなにも豊かなのだろうか?


良きビジネスは良き市民から

デンマーク人は子供の頃から学校や家庭、あらゆるコミュニティで「良き市民」であろうとするシビル・ソサイエティ(Civil Society、市民社会)を学び、21世紀において大切なスキルを子供の頃から教わっている。

子供の頃から学校や家庭、あらゆるコミュニティでシビル・ソサイエティ(Civil Society、市民社会)を学んでいるからだと思います。

日本人には馴染みがないかもしれませんが、シビル・ソサイエティとは、政府や企業から独立して、よき社会を作ろうとする市民組織全体のこと。たとえば、非営利組織や民間の研究機関、ボランティア団体など。「良き市民」である、または、そうあろうとするのがデンマーク人なんです。

 シビル・ソサイエティとは、政府や企業から独立し非営利組織や民間の研究機関、ボランティア団体などのよき社会を作ろうとする市民組織全体のこと。法的に認められた市民組合がなんと10万以上あります。人口が560万人の国に10万以上の組織。デンマーク人は「より良き社会を作ろう」、「社会に貢献したい」は当たり前で、日常的なこと。つまり様々な問題を抱えている教育、健康、環境問題など、「サステナビリティ」という解決策となり得るビジネスモデルがまだ確立されていない問題を解決しようとするスタートアップが多い。


デンマークには、法的に認められた市民組合がなんと10万以上あります。人口が560万人の国に10万以上の組織。デンマーク人である僕でさえ驚くほど、この国の人は「社会に貢献したい」と思っているんです。

つまり、「より良き社会を作ろう」と考えるのは、この国では当たり前というか、日常的なことなんですよね。なので、デンマークのビジネスのほとんどはフェアに行われる。フェアであれば、必然的にビジネスは持続しやすくなりますよね。デンマーク人は、21世紀において大切なスキルを子供の頃から教わっているんだと思います。

「シェアエコノミー」は、デンマーク的思考法だった!

 19世紀前後にデンマークで起きた、「Andelsbevægelsen」という協同組合運動の歴史が深く関係していると言われています。デンマークで育った人なら、誰でも一度は学校で習う話。

どういう運動だったかというと、よく例に挙げられるのが19世紀後半の出来事。ロシアの東ヨーロッパ侵攻によって、小麦の価格が暴落。その結果、小麦生産に依存していたデンマーク農家は危機に瀕し、単純な小麦生産から酪農や食肉生産への転換に迫られました。となると、搾乳所や食肉加工工場を新設しなきゃならない。でもそんな大金は持っていない。

そこで考え出されたのが、「協同組合」という概念でした。一人では買えない。けれど、近所の農家も同じ問題を抱えている。それならお金を折半して一つだけ買って、共有すればいい。そうすれば、費用が抑えられる上に、資源の無駄にもならない。それぞれにとって Win-Win だし、これがきっかけで新しいコミュニティにもなる。

そうやって始まった協同組合運動は全国に拡大。生産者と消費者が協同して運営する、今で言うところの「生協」も生れました。お互いの経済的な負担やリスクを軽減し、得られた経済的利益を共有する。これが組合の目的でした。

「協同組合」や「シェア」という考え方が、「良き市民」という価値観の根本にある

19世紀前後にデンマークで起きた、「Andelsbevægelsen」という協同組合運動の歴史が生み出した「協同組合」という概念が深く関係している。一人では買えない。けれど、近所の農家も同じ問題を抱えている。それならお金を折半して一つだけ買って、共有すればいい。そうすれば、費用が抑えられる上に、資源の無駄にもならない。それぞれにとって Win-Win だし、これがきっかけで新しいコミュニティにもなる。ビジネスがフェアであれば、必然的にビジネスは持続しやすくなる。そうやって始まった協同組合運動は全国に拡大。生産者と消費者が協同して運営する、今で言うところの「生協」も生れました。お互いの経済的な負担やリスクを軽減し、得られた経済的利益を共有する。これが組合の目的でした。今流行っている「シェアエコノミー」という概念は、馴染み深いデンマーク的思考法だった。良きビジネスは良き市民から生まれるが信条であり、生産者だろうが消費者だろうが、「自分が社会を作っている」と当事者意識を持ており、「じゃあ良い社会を築くにはどうしようか?」の考え方から福祉国家を形成した。世界的な流れでもあるco-working(協力し合って仕事する)はデンマークは特にその傾向が強い。そして、「良き市民」という考え方の自体が、この国の競争力を高める要因になっていた。


「協同組合」や「シェア」という考え方が、「良き市民」という価値観の根本にある

生産者だろうが消費者だろうが、「自分が社会を作っている」と当事者意識を持てるんですよね。そうなれば、「じゃあ良い社会を築くにはどうしようか?」と考えるのは自然のこと。そして、こういった考え方から福祉国家という今の形になったとも言われています。

co-working(協力し合って仕事する)は世界的な流れでもあると思いますが、デンマークは特にその傾向が強い。そして、「良き市民」という考え方自体が、この国の競争力を高める要因になっている

これは世界中で起きている大きな潮流だと思いますが、デンマークでは特にその傾向が強い。

教育、健康、環境問題など、僕たちは今様々な問題を抱えていて、考え直さなければならない段階に来ていますよね。最近よく耳にする「サステナビリティ」という問題を解決しようとするスタートアップが多い。問題があって解決されていないということは、解決策となり得るビジネスモデルがまだ確立されていないとということ。逆に言うと、それさえ見つかってしまえば一気に解決する

ですから、今流行っているAirbnb(空き部屋仲介サービス)やLyft(車の相乗りサービス)、デンマークのサービスで言えばletsgo(車を貸し出しサービス)など、「シェアエコノミー」という概念はこの国ではもともと馴染み深いものだったんです。

[事実]

世界一幸せな国の世界ランキングに見る、デンマークの驚くべき「20の真実」

幸福度 1位(2016, 2014, 2013)3位(2015)

住みやすい都市 1位

一人当たり名目GDP 6位

物価の高さ 3位

消費税率 3位

国民負担率 2位

経済的自由度 11位 ヨーロッパ43ヶ国中、第4位。「ビジネスの自由度」「所有権」「職業選択の自由度」が高い

労働時間の少なさ 4位 週37時間労働までという法律

国際競争力 13位 日本のわずか約4%の人口で13位

社会寛容度 10位
平和度指数 2位

子供の幸福度 6位

民主主義指数 3位 若者の間では政治を語るのが「カッコいい」「イケてる」という風潮

貧困率の少なさ 1位

報道の自由度 3位 国際報道倫理委員会に所属 日本は所属していない

汚職の少なさ 1位

男女平均度 5位104位の日本と比べると、デンマークの女性は圧倒的に強い。

技術革新力 8位

タブーがなく、多様性に富んだ社会はクリエイティブになりやすく、国民の高い教育水準も手伝って、イノベーティブ
インターネット普及度 4位

補足的にデンマーク、コペンハーゲンに関する基本情報から。見てみると


【基本情報】

 デンマークはヨーロッパ北部に位置し,北はノルウェー,東はスウェーデン,南はドイツと国境を接している国。総面積は4万3千平方km九州とほぼ同じ、人口は約560万人(兵庫県とほぼ同じ)だが,そのうち約4分の1が首都コペンハーゲンに住み,87%が都市部で生活を営んでいる。立憲君主制をとる民主国家であるデンマークは,日本とともに,現存する王室の中でも最も長い歴史を持つ国の一つに数えられている。また「福祉先進国」としても知られており,消費税率25%,国民負担率約70%という,日本と比較して高い税率を誇る一方で,医療費や教育費は無料,各種高齢者サービス等の社会福祉が充実する。カーボン・ニュートラル計画、自転車レーンの構築などの環境政策などが評価され、2012年6月には2014年の欧州環境首都に選出された。

その国の最大都市である「商人たちの港」に由来するコペンハーゲン、北ヨーロッパ最大級の都市圏人口は190万人に達する。古代ローマ時代には辺境の地の島とみなされ、漁港から次第に商業の要衝へ発展してきた。ハンザ同盟と対立し市街地および城塞は度重なる攻撃を受けたが、王国の主要都市となっていき、近世には首都となった。中立主義となり,2度の世界大戦でも中立を維持しました。第二次世界大戦中ドイツ軍に占領されが、戦火は逃れたため、「北欧のパリ」と比喩される。伝統的な海洋貿易国であるデンマークは,1612年には北欧唯一の東インド会社を設置。現在でも世界最大の海運会社「マースク」を有するなど,「海に生きる」国家としてその存在を知らしめている。他には世界的なビール会社のカールスバーグ、製薬会社ノボノルディスクの本社などが置かれている。 

[参考記事リンク]

クリスチャン・ベイソン

デンマークのオープンイノベーションラボ Danish Design Centre (DDC)のCEO。前職はデンマーク政府の自動教育省と雇用省、経済成長省の3省庁が共同設置しているフューチャーセンターMindlabの代表。大学の講師や政府機関のアドバイザーとしても活躍。著書に公共機関のイノベーションとデザインに関する『Design for Policy』や『Leading Public Sector Innovation』などがある。

デンマーク流に学ぶ“都市ラボ型”のビジネスモデルDDC CEO クリスチャン・ベイソン氏講演録   成功企業が実践する新たなオープンイノベーションの形

https://bizzine.jp/article/detail/555

デンマークが産んだ「クリエイティブを高めるツールキット」の使い方とは?

イノベーションを組織化するツールキット「REMODEL Toolkit」の内容やデザインのDNA解明

https://bizzine.jp/article/detail/3675

興味がある方は、ランチミーティングなどで時間に合わせて、共有しご紹介します。

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