カメハメハ大王像の秘密。

６月11日はハワイ全島を統一したカメハメハ一世（大王）の功績をたたえる「キングカメハメハ・デー」で、ハワイ州の休日。この日の大王像は毎年たくさんのレイに飾られる。

ということで、カメハメハ大王像のお話。

1795年、オアフ島のヌウアヌ・パリの決戦によりカラニクプレ率いるオアフ軍を倒し、ハワイ諸島を統一した偉大な人物、カメハメハ大王。
オアフ島ホノルルのダウンタウン、アリイオラニ・ハレ（ハワイ州最高裁判所）の前に行くと有名な彼の銅像が飾られている。

しかしこの銅像、これひとつではないのをご存知だろうか？
実はカメハメハ大王像は全部で「４つ」あるのだ。

ひとつ目は西洋人で初めてハワイ諸島を訪れたキャプテン・クック来島の100周年を祝おうと、当時のハワイ政府のメンバーだったウォルター・ギブソンの発案によるもの。
ちなみに、キャプテン・クックが最初にハワイに上陸したのは、1778年カウアイ島のワイメア湾だ。いまもクックの像がぽつんとワイメアの小さな町中に立っている。

議会はカメハメハ大王像の製作を承認し、１万ドルを投入。
ウォルターをプロジェクトのリーダーとして、ネイティブハワイアンも加わったが、彼らはすぐにプロジェクトを抜け、ウォルターひとりで進めることになった。
彼はイタリアのフィレンツェに住むボストン出身の彫刻家でハワイアンの血を受け継ぐ、トーマス・グールドに製作を依頼した。
依頼を受けたトーマスは、像のモデルとして写真を受け取ったがそれを無視し、目鼻立ちはヨーロッパ風に、左手で槍を持ち、マントをまとっている姿はヨーロッパの皇帝のスタイルを取り入れ、宙に上げられた右手はアロハスピリットを意味していると言われている。1880年、ブロンズ（青銅）で鋳造されるためにパリへと運ばれた。その後、カラーカウア王の時代へと入り、イオラニ宮殿も完成し、銅像の到着を待っていた。

1883年、銅像を乗せた船はハワイへ向けて出航。
しかし、あろうことか、フォークランド諸島付近で銅像を乗せた船が難破。
銅像は海のもくずと消えたと思われ、保険金１万２千ドルが下りたのだ。
その１万２千ドルの保険金で再度グールドに依頼し、急いで２つ目が完成。
それが無事ホノルルに到着し、ハワイ州最高裁の前に立っている。もっとも知られているカメハメハ大王像のことだ。

さてここからがおもしろい。
海のもくずとなったと思われていた最初の大王像が、フォークランド諸島の人たちによって発見され、引き上げられていた。それも２つ目の大王像が送られる前の出来事だった。
フォークランド諸島の人たちは船の船長に500ドルで大王像を売り、船の船長は875ドルで大王像を像を創ることを発案したウォルターに売ったのだ。
海から引き上げられた最初の銅像は、カメハメハ大王生誕の地の近く、ハワイ島コハラコーストのカパアウという小さな町中に飾られている。

第３の銅像があるのはハワイではない。
アメリカ本土、ワシントンＤＣのアメリカ連邦議会議事堂にある。合衆国の50番目の州となった10年後の1969年４月15日、連邦議会議事堂の円形ドーム内の彫像ホールにカメハメハ大王像とダミアン神父像が寄贈された。
大王像は飾られている像の中でも最重量を誇り、その重さは６トン以上。
2008年にハワイ出身のオバマ大統領が大統領選に出馬した直後に、人目につきやすい場所へと移設された。

最後に４つ目の銅像だが、ハワイ島ヒロのダウンタウンにある。この像はカウアイ島のプリンスヴィル社が12万５千ドルをかけて製作したもので、当初はカウアイ島に飾られるはずだった。
しかしカウアイ島のネイティブハワイアンたちは、カウアイ島がカメハメハ大王軍との戦いによって征服されたわけではなく、平和的な合意による併合でハワイ諸島に属すことになったから大王像を立てる必要はない、との理由により、像を立てることに猛反対したのだ。
長期的な論争を経て、1997年にカメハメハ大王が政治力を発揮したヒロへとプリンスヴィル社が寄贈したのだ。

以上、４つのカメハメハ大王像にはそれぞれ独自のユニークな歴史があるのである。
キングカメハメハ・デーはまだハワイが王国だった時代の1871年にカメハメハ５世（ロト・カプアーイヴァ）によって制定され、ハワイがアメリカ合衆国の50番目の州に昇格した1959年に最初に制定された州の祝日のひとつだ。
ちなみに大王の後ろに立つ最高裁アオイオラニ・ハレも1874年にカメハメハ５世が建てた建造物だ。
この日はカメハメハ大王像に長いレイがいくつも掛けられ、フローラルパレードが行われる華やかな一日。それにしてもなぜ６月11日がキングカメハメハ・デーなんだろう？ カメハメハ大王の誕生した日は不明だし、逝去した日でもないのに。この日に制定された理由は謎のままである。