スポーツ選手のセカンドキャリアを活かせ
私はリーフラス株式会社というスポーツ業界の会社で、スポーツというコンテンツを唯一の武器に生きてきました。
この会社にいて思うのはまず「スポーツにはビジネスとして対価をいただく価値と魅力が十二分にある」こと。
そしてもう一つは、それとは相反して「選手のセカンドキャリアの悩みや相談を受けることが多い」という事実。
僅か20年程度ですが、この業界で生きる自分が感じている『スポーツ選手のセカンドキャリア問題』への想いを、今回は書いてみます。
(あくまで個人的な見解で、全ての選手が当てはまるわけではございません)
Ⅰ:足りないのは知識と経験で、能力は高い
まず、トップアスリートの人間力は軒並み高いです。
当たり前ですが、忍耐力や献身性、気持ちの切り替えや継続力は、一般人と比べて超人クラスであると考えて良いでしょう。もちろん個人差はありますし、自分の土俵でないと自信を持てないタイプの人もたくさんいます。
しかし条件さえ揃えば「国内外でNO1を決めるような舞台でベストパフォーマンスを発揮する」ようなストイックな人材です。
能力が低い訳が無いんです。
ただ、スポーツ以外の知識や経験が無いことと、持ち前のプライドの高さから「初期教育には注意が必要」です。
スポーツ選手としてのキャリアを捨て、0からのスタートとなればお互いに時間をかけて新たなキャリアを育てていく覚悟は必要でしょう。
Ⅱ:ハッタリと交渉気質である事実を互いが認識する
採用面接時や入社後に「スポーツ選手雇うのは難しいよ・・・」と企業側の愚痴を聞くことも少なくありません。
原因は殆どの場合、前述したプライドの高さ。
面接で無愛想な態度や自信過剰な言動が出たり、研修で分からないことを素直に聞けなかったり、報酬の部分で譲れなかったり・・・・
しかしこれを「アスリートは企業では使えない」という理由にしてしまうのは短絡的で、互いに損失です。
まず、雇う側もそれが当たり前で、それこそがその人材のストロングポイントだと認識すること。態度や言葉遣いが粗暴というレベルであれば論外ですが、その気高さや一人でも戦える精神力はプロだからこそです。
毎年単年で評価を勝ち取らないと、いつクビになるか分からない日々を過ごしてきた彼らにとって弱気な姿勢は自殺行為。自分の納得できるところまで交渉することは、生きるために必要な行為。
それは雇われサラリーマンにはない(育てられない)特徴で、使い方によっては組織の武器になります。
逆に選手はそういった「自分たちの当たり前が世間では理解されない」ことを知っておくべき。
アスリートのキャリアを武器にしようと思えば、互いが相手を理解しようとする(自分の常識を押し付けない)ことが前提条件になるでしょう。
Ⅲ:協会やリーグのサポート
しかし企業が即戦力を求め採用面接という一発勝負の場しか用意してくれなければ、そもそも採用という障壁を超えられないかもしれません。
やはり本人の心がけと企業側の理解だけでは現実は難しいでしょう。
各協会やリーグも、様々な研修や企業とのマッチングなどサポート体制も整ってきています。
しかし私自身が感じているのは、企業側に元アスリートを雇用することのメリットを平時から伝えていかないと、突然紹介される企業側も簡単には理解できません。
結局は人材紹介のマッチングだったり、学生時代の先輩・知人やスポンサー企業の紹介というルートで雇用が決まることが多く、「採用側が強く望んだわけではない」という歪が、互いの能力を引き出す組織の大前提を狂わせます。
「元アスリートの雇用による企業のブランディング」というマーケティングによって企業側に人材の積極活用が進まないと、ただの「スポーツが得意な人材の中途採用」でしかありません。
リーグや協会も就職させることをゴールとせず、アスリート経験の社会活用の有用性を研究し、世に伝えていくべきです。
選手本人にも現役時代から様々な研修を通し、知識と経験を積ませておくことが大切でしょう。
特に収入があるうちに自己投資させたり、球団やクラブとして引退後を見据えたサポート体制が整えば、結果として選手との契約交渉の材料にもなるはずです。
(全て既に取り組まれていると思いますが)
Ⅳ:やはりスポーツで食べさせてあげたい
そもそもスポーツが仕事にならないことが課題をより大きくしているのですが、現時点でスポーツを職にできる環境は限られています。
現役時代に所属していた球団・クラブのフロントに入れるのは極一部。何とか自分が人生を捧げたスポーツに携わりたいと普及や育成の道を選ぶ人も少なくありませんが、そこで成功している人も決して多くはありません。
ここは正に私自身が人生をかけて取り組んでいる『スポーツを仕事にできる社会の実現』と繋がる部分であり、教育や健康も含めスポーツの価値を報酬にコミットさせ、セカンドキャリアの可能性を拡げたいと思います。
どちらにしても、スポーツに打ち込んできた若者はもちろん、プロやオリンピックを経験したような人達が競技をやめた時、スポーツと無関係な職に就くという現状は損失でしかありません。
その分野で誰よりも成功を収めた人材が、それを生涯の仕事として人生を全うできる世の中にしたいです。
Ⅴ:企業や自治体がその価値を活用できる時代に
弊社の事業や私個人の訴えで、全員の雇用を確保することは不可能です。
それ以上に、他分野の企業にこそスポーツのポテンシャルを理解し活用していただきたい。
そしてそれは、今だからできること。
「○○市出身」「○○高校出身」「ミスター○○」と、全てのアスリートには自身を育ててくれた肩書があります。
地方では少子高齢化や人口減少が進み、どこも廃れゆく地元にカンフル剤を求めている。
企業も同じです。地方に本社を置く企業は、規模で勝てなくても地元のシェアや地域内の繋がりで生き残りを模索している。
必要なのは、子供たちの夢・地元企業の看板・お年寄りの生きがいです。
アスリートは、必ずしも指導者や起業家になる必要はありません。
地元のアスリートをハブスポットに、自治体と地元企業が協力してソーシャルビジネスを展開する。
今の時代であれば、現役時代からSNSやオンラインを使って実現できる。
選手にとっても、現役時代からセカンドキャリアの準備や下積みができるんです。
そこで産まれる熱量と経済効果は、セカンドキャリアの舞台と報酬に相応しいものになるはず。
私が目指す『スポーツによるまちづくり』は、アスリートのセカンドキャリア活用も欠かせないピースの一つです。
余談ですが・・・
この構想には、自治体が抱えるスポーツ施設のマネタイズも欠かせないピースです。
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