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ハンド・イン・ハンド・エルサレム校父母たちのインタビュー 2

私は将来,我が娘をエルサレムのハンド・イン・ハンド(Hand in Hand)幼稚園に通園させたいと思っている。私はこの学校を選択した親たちに関心を持った。そこで2009年12月、仕事の合間をぬって、それぞれ宗教の異なる親にインタビューをした。

一滴のしずくとなって、水面に徐々に波紋を広げ、社会に浸透していけたら
タミー・アインシュタイン(ユダヤ人 母親)
宗教: ユダヤ教徒
職業: アートセラピスト
出身地: ニューヨーク。 12 歳でイスラエルに家族と共に移住
学歴: 現在博士論文を執筆中
息子: HIH エルサレム校に在学中。もうすぐ16 歳(HIH 歴 9年)

子供を通わせた動機は?
「恐怖心」は無知から来るのです。この国は、いろいろなグループがお互いに背中合わせで住んでいます。でも他のグループについては実はお互いに何も知らない。そして「知らないこと」が他者に対しての恐怖心を生んでいると思います。相手の文化や言葉を知れば、この状態から開放されて恐怖心もなくなると思います。いずれにせよ、私たちは隣人として一緒に住んでいかなければならないのですから、恐怖の中で暮らしていくよりは相互理解の中で暮らせた方が良いですね。HIHは真の共存コミュニティーだと思います。

実際に子どもを通わせて?
HIH 校の子どもたちは互いに尊敬しています。これは貴重です。最近、イスラエルでも学校における構内暴力が問題になっていますが、HIHでは暴力問題は一切ありません。HIH では相互に対話が持たれています。例えば昨年のガザ戦争中に、相手の意見を聞くこと、自分の意見を持つことのバランスをよく学んでいました。それは必ずしも合意が必要ということではありません。対話とは相手の考えを知ることだと思うのです。

将来軍隊に行くにあたって
息子は、正しい倫理観とモラルを以って行動できると思います。彼は 18 歳になったらイスラエル国防軍に入隊すると言っています。イスラエル国民の義務としてやらなければならないと考えているのです。HIH 校の経験により、軍人として、正しい倫理観とモラルで行動できる兵士になると思います。HIH の親の一人が、予備役でベツレヘムのチェック・ポイントに服務していたことがありました。同じ HIH 校の親仲間で、キリスト教徒が仕事で通っていました。お互いにいつも友人として接しました。周囲のアラブ人やユダヤ人兵士に良い模範を示したと思いますよ。

良い点,悪い点
まだまだ、HIH 校は大海の一滴。もっと親たちの努力が必要だと思います。息子の学年は1学年1クラスしかありません。社会性を身につけるために、子どもをもっと大きい学校に通わせたいと転校させた親もいました。一人は3カ月で HIH 校に戻り、一人は今でも休みやイベントがある時にいつも HIH校に帰ってきて、行事に参加しています。特に私たちの世代は一緒に学校を作り上げてきたので、親も子どもも本当に一つのコミュニティーを形成しています。このコミュニティーから離れるのは難しいと思います。

確かに、共学共存の理念に疲れて離れていく親たちもいます。家の近所の学校に子どもを通わせていれば、送り迎えの手間やいろいろな親同士の会合に出席する必要もない。それなりの理念を持っていなければ、継続するのは大変だと思います。私自身は子どもを HIH 校に通わせていることに100%満足しています。

周囲の反応は?
ハンド・イン・ハンド校の子どもたちは二民族の「かけ橋」の役割をしていると思います。私たちはシナゴークに毎週通っています。そこでユダヤ教を守っている友人が、息子のバル・ミツバ(ユダヤ人の成人式) などに HIH 校のクラスメート(他宗教)も招待した時、普段接する機会がない子どもたちがお互いにとても興味を示し、質問をいっぱいしていました。

私は開校当初から参加していましたが、その時に、「ユダヤ・アイディンティーの喪失 」を警戒する反対意見がありました。しかし多文化社会イコール自己のアイディンティーの喪失にはなりません。反対に多文化だからこそ自分のアイデンティティーを考え、自覚する機会が持てると思います。私自身もニューヨークの多民族社会で育ちましたが、常に自分はユダヤ人だと自覚していました。だから、このような心配はナンセンスだと思います。周囲の友人には、私の息子をみて自分の子どもを HIH に通わせなかったことを残念に思っている人もいます。また、この学校の活動がイスラエルに存在する差別主義を変えていくかも知れないと確信しています。

このような方法が将来、両民族間の平和共存に繋がるか?
「平和」という言葉はとても遠くて、今の私たちには手の届かない所にあると思えます。しかし、多くの親たちは今のイスラエルの現状に疑問を持ち、その解決方法
を模索して HIH 校に子どもを入学させました。HIH が一滴のしずくとなって、水面に徐々に波紋を広げ、社会に浸透していけたらと願っています。(2010/06 執筆)

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