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山登りに必要な装備とその理由~トレッキングシューズ編~

このシリーズでは、登山時に必要な装備を、1つの記事につき1つ取り上げ、山登り初心者だった頃の自分の経験や失敗を振り返りながら、”その装備がなぜ必要なのか”を書かせて頂きたいと思います。

今回のテーマは『トレッキングシューズ』です。

登山時の「足」は何よりも大事

登山では自分の「足」が動かなくなったら、どうすることもできません。

例え手を怪我しても歩くことができれば下山できますが、移動手段が「歩き」しかない登山は、足を怪我して動けなくなると、誰かにおんぶなど担いでもらうか、ヘリに救助要請するしか助かる手段はありません。

そんな山を歩く中で、とても重要な「足」を守ってくれるもの。それがトレッキングシューズです。


普通のスニーカーと何が違うのか

では、トレッキングシューズは一般的なスニーカーと何が違うのか?それは、「防水性」「剛性(靴の硬さ)」です。この2つについて以下で説明していきます。

登山に必要な機能①防水性

登山靴は、基本的にゴアテックス素材を使った防水仕様となっています。

雨が降っていれば当然ですが、雨が降っていなくても、登山道の地面や草木が朝露などで、靴が濡れてしまうことが結構あります。

靴の中まで水が染み込んでくると、足の皮膚はふやけて靴擦れの原因となってしまいます。登山中に靴擦れが痛むと、楽しさが半減してしまいますし、下山できなくなるというリスクも高まります

(※もし登山中に靴擦れしてしまった場合は、絆創膏や靴擦れ用のパッチで少し痛みを緩和できますので携帯しておくと良いです)

ゴアテックス

モンベルHPより ゴアテックス素材説明


登山に必要な機能②剛性

剛性とは靴全体の硬さのことですが、一番大事なのはソールの硬さです。

登山道はアスファルトのように平らな訳ではなく、木の根っこや岩など凹凸がある道を歩いていく必要があります。

そんな中で、ソールが柔らかい靴だと、歩く度に足を挫かないように力を入れて歩かないといけないし、疲れた頃には足を挫きやすくなります

なのでトレッキングシューズは、ソールに硬い板が入っています。それにより地面は凸凹でもソールは曲がらず、足への負担が少ない。足の裏は常に平らな面(硬いソール)に乗っていることになるのです。


フィッティングの重要性

そこまで大事なトレッキングシューズなのであれば、当然、フィッティングも重要です。

フィッティングとは、サイズ選び、履き方、靴紐の締め方などです。

例えば、トレッキングシューズはジャストサイズを選んでしまうとアウトです。一般的にはつま先の前に1~1.5㎝の隙間ができるようなサイズを選ぶ必要があります。

なぜなら、下山時には前のめりになることが多いから。靴内部でつま先が靴の前方にあたり続けると、指先は擦れ続けて下山し終えることには激痛です。

フィッティング方法

では、フィッティング方法の一例として、僕が販売員時代に行っていた方法をお伝えします。

①ゲージで足長を測り、大きめのサイズの靴をいくつか準備する。
実際に着用する靴下(もしくは同等の厚みのもの)を履く。
③靴のインソールを抜き、地面に置き、踵の位置を合わせる。
つま先の前に1~1.5㎝の隙間があることを確認。
④インソールを戻し、靴に足を入れる。
⑤靴を履いた状態で、踵を地面に軽く打ち付け、靴内部でつま先の前に隙間がある状態を作る。
靴紐をつま先側から順に絞っていく。緩まないようにしっかりと。
⑦ハイカットやミドルカットなら一番上までしっかりと締める。
⑧下山時を想定して、前のめりになってみる。つま先が当たらない事を確認。
⑨全体的に痛みや圧迫感が無いかを確認。

以上です。⑤以降は、登り始める前に登山靴を履く際も同じ流れで、フィッティングします。

フィッティング

モンベルHPより フィッティング時は踵側に足を詰める


目的に応じたシューズの選び方

では、色んな形のトレッキングシューズがある中で何を選べばよいのか?ということですが、今回はカットの高さに分けてご説明します。

ハイカットシューズ

基本的に、低山だろうが日帰り登山だろうが、山を歩くならハイカットを選んでおけば間違いはないです。

ですが、あえて用途を絞るなら、重い荷物を背負うテント泊登山や縦走する場合、または足腰に自信が無い方は特にハイカットを選んでおくべきだと思います。

なぜなら、ハイカットは見た目通り、足首まで固定されるので、特に重い荷物を持った状態では足首への負担減が期待できます。

重い荷物を持った時に不安定な登山道を歩く時って、一歩一歩をすごく慎重に集中して歩きます。そんな時に、靴紐をきちんと締めることでギブスのような安定感があり、足首の負担を和らげくれるハイカットはとても安心感があります。

に

モンベルHPより ツオロミー ブーツ Men's

ミドルカットシューズ

ミドルカットは、足首が圧迫されるのが苦手な方など、ハイカットはちょっと硬すぎて馴染めないという方におススメです。

ミドルカットの良い所は、ハイカットとローカットの良いとこ取りなところ。ハイカットほどではないですが、くるぶしまでは固定されるので、ローカットより安定感はある。そして、ローカットほどではないですが、ハイカットよりは軽快な足さばきができる

身近な山での日帰り登山を中心に考えている方などには、初めの一足としてもおすすめできます。

日帰りの低山を中心にミドルカットの靴で登ってきた方が、テント泊や縦走など本格的な登山を始める頃のステップアップとして、ハイカットも考え始めるという順番でも良いかと思います。

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モンベルHPより ワオナブーツ Men's

ローカットシューズ

まず、登山用のローカットはパッと見は普通のスニーカーと変わらない印象を受けますが、基本的には、ソールの硬さと防水性はきちんと兼ね備えています。

ローカットの魅力はやはり軽快に歩けること。そして、足首やふくらはぎの筋肉をしっかり使いながら歩けることだと思います。

その分、疲れやすくなるし、足を挫くリスクは高くなるので、自分の経験や山のレベルで慎重に判断してみてください。

ハイカットやミドルカットを持っている人が、歩き慣れた山を少ない荷物で、ローカットの靴で登る。これはすごくありですし、ハイカットではなかなか出せない自由な感覚も魅力です。

ローカットは、歩き慣れた方の2足目以降で考えておけば良いと思います。

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モンベルHPより ラップランドストライダー Men's


足腰に自信がない人ほど、しっかりとした登山靴を

ここまで、トレッキングシューズの必要性や選び方について説明してきましたが、大事なのは、山歩きに慣れていない方こそ、ハイカットやミドルカットのしっかりとした登山靴を選ぶべき、ということです。

”そんなに本気で登山する訳じゃないからスニーカーでいい”とか、”高い山に登る訳じゃないからローカットから始める”というのは発想が逆です。

登山を始めアウトドアを行う際の道具は、ケガや事故から人を守るという役割で設計されているのが基本です。慣れていない方こそ、きちんと装備を揃える必要がある。

はじめは、アウトドア製品の機能について詳しくなくても良いのです。実際にフィールドで使ってみることで「なるほど!この時のためにこんな作りになっていたんだ!」という気づきを重ねていくことがすごく大事だと思っています。

そういう意味では、"まだ登山したことないけど、道具を先に揃える"という見た目から入るスタイルで全然OK。自分の経験や山登りのスタイルに見合った靴を選んで、安全で快適な登山を始めましょう。


(表紙写真:Yuya Nojiri)

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