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あの戸惑った表情よ

 別の意味でフィジカルエリートだった私は、小学6年生の時点で体重が64kgあった。64kgといえば、身長170cm台の男性の体重くらい……?

 痩せ型の男性なら50kg台でもおかしくないから、女性で、というか女児でその体重はなかなかのものだ。自慢調に書いてるけどなんだこれ自慢にもならないな。

私はその頃から太っていたけど、いまいちまだ肥満体であるという実感を持っていなかった、と思う。

 というかその頃はまだ太ってる云々と指摘されたこともなかったし、美意識なんて欠片もなかったから、どの程度の体重が痩せていて、太っていてというのを把握していなかったというのもある。

 そう思って今調べたら12歳の平均体重は44〜5kgあたりらしい。そこからプラス20kgあったのだからえげつない。レベルが違う。

今でも印象的なのは、6年生の夏休みを控えたあるホームルームでのこと。もうホームルームという言葉がすでにノスタルジーすぎるけど、そこに夏休み直前というエッセンスが加わっているからノスタルジーの鬼だ。

 私の通っていた小学校では、夏休み前に成績表を配る際、体重測定の紙も一緒に配布される。さぁ今季の成績は……と成績表を自分の席で読みふけっていたら、どうやら裏側にあった体重測定の紙が丸見えだったらしい。隣の席のOくんが戸惑い半分、笑顔半分な表情を浮かべていた。

お調子ものなOくん。Oくんは、私の成績表を覗くボケをやろうとしていたらしいのだけど、拍子に笑えない私の体重を見てしまったようなのだ。笑わそうと、笑顔を巻き起こそうとしたら笑えないものを眼にしてしまったからこその、妙な表情だったらしい。

 まぁそりゃあ引くと思う。64kgなんて体重、その当時のOくんよりもおそらく10kgくらい上回るだろうし、下手したら今のOくんよりも重い。大人になった今でさえ、150cm台で64kgといえば「うん……」という感じなのだから。

あのOくんの表情は「ああ私の体重、やばいんだ……」と自覚させてくれた絶妙なものだったなあ。12歳の少年とは思えないいぶし銀な表情だったもの。

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