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読書日記『失敗すれば即終了!日本の若者がとるべき生存戦略』(Rootport,2016)
この本は、「無色透明の人間」を目指す筆者が、20代のうちに書き溜めたブログのまとめである。ブログのタイトルは「デマこいてんじゃねえ!」である。事情通から「デマを言うな」という罵声が飛んできて、知識を補完していけるのでは、という期待を込めて名付けたそうだ。
本のタイトルにある通り、「今、少子高齢化を食い止めなければ2050年に日本は終わる」という問題意識のもと、「筆者にとっての正しい生き方」を考え続けた過程が書かれている。
仕事、結婚と出産がこの本の大きなトピックだろう。
第1章 2050年、日本終了!
第1章では少子高齢化や転職などに触れつつ、筆者の危機感を読者と共有するパートになっている。
この章で気になった部分は以下の部分だ。
個人の生存戦略として。「私たちが生き延びるためには、交換不可能な人材になるしかない。自分の“できること”のリストを充実させて、自分にしかできない仕事を手に入れるしかない。群を抜くのは、その方法の一つだ。そして、そのためには、何もしなくていい時にしていることを仕事にすればいい」 (p52)
たしかに、積集合としてなら「私」の存在価値を見つけやすい。わかりやすいなぁと思った。
第2章 未来の仕事を考える
第2章では、これからの仕事について語っている。この章では「もっと自分の能力を高く売っていい」「高く売れる市場に移動していい」というのが、筆者の結論だと思う。
これからの時代に必要とされるのは「環境を作れる人」だ。ミスのない環境を。 (p94)
私は工場や倉庫での日雇い派遣バイトをしている。社員やパートの人がやっていることが「環境を作る」という仕事なんだろう。あれは観察眼と経験が必要な仕事だと思う。動かされている立場でも、そのような仕事を観察し、批評することができると思えば、日雇いバイトも面白い。
第3章 結婚しないヒトの遺伝子と少子化の原因
この章のテーマは少子化だ。
平成24年就業構造基本調査から筆者が作成したグラフによると、世帯年収500万円が子どもを作るかどうかの分水嶺になっている。また、500万円以上の世帯でも、一人っ子世帯は減らず、3人以上の子どもがいる世帯もほとんど増えない。つまり、「あなたの代わりに子供を作ってくれる人はいないのだ。(p126)」
また、なぜ晩婚化・非婚化が起きるか、について、「カネがないと結婚(=子育て)できないし、結婚したい相手と出会えず『心理的去勢』が起きる」と仮説を立てている。
その上で、少子化の原因と対策について、以下のように述べている。
少子化の原因が「子供に充分な投資をしたがる」という性質なら、対策はシンプルだ。
誰もが「子供に充分な投資ができる」と思えるようになれば、少子化は解消される。 (p172)
(略)子供の医療費や教育費はできるかぎり引き下げるべきだ。また、若年層の世帯所得を引き上げるもっとも簡単な方法は、女性の雇用状況を改善することだ。 (p195)
筆者の述べる対策には、基本的に賛成だ。しかし、今、本気で少子化を解決したいと思っている人は、どれくらいいるのだろうか、と考えてしまう。これは悲観的すぎるのだろうか。あるいは、筆者の言う「心理的去勢」のようなものだろうか。
選挙に行っても、子育てや女性活躍、男女平等を推し進める候補者は少ないと感じる。数少ない意見表明の場だと思って欠かさずに行っているけれど、正直、無力さを味わうイベントと化している。諦めなければ、いつか変わるんだろうか。
第4章 「ググレカス」が世界を変える
この章の扱いを私はまだ決めかねている。「その他」と総括の中間のようなものだろうか。
気になった部分を抜粋しておくことで感想の代わりにする。
この「産・官・労の高齢化」こそが、若い世代の生きづらさの原因だ。そして日本を覆う閉塞感の、本質的な原因でもある。 (p239)
思考とは、自分のなかのもう1人の自分と語り合うことをいう。言葉を覚えた人間は、もはや1人にはなれない。言葉を発する自分と、言葉を受ける自分がいるからだ。 (p247)
「自分を語れる」のは、大人の条件の一つである。
(略)
まず手始めに、語る技術を身につけることだ。60歳の人間は、20歳の人間の3倍もものごとを経験しているはずだ。自分が見聞きしてきたものを、次世代へと伝えること。自分が死んだあとの世界のために言葉をつむぐこと。 (p248-249)
全体的な感想として、データを示しつつ、自論を時に感情的に書き連ねていくスタイルが面白かった。私は自分のなかで考えて終わってしまうだけなので、批判される勇気を持って自論を展開できることを尊敬する。
自分を語り、いろんなことを論理的に考えられる人間になりたい。
読了日:2022/10/30
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