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読書日記『ムシカ 鎮虫譜』(井上真偽,2020)

本作について語る前に、井上真偽(いのうえ まぎ)との出会い方を語らせて欲しい。

私が井上真偽について認知したのは、3ヶ月前。近所の書店で激推しされていた。私はその店主のセンスをいいセンスだと思っているので、たぶん面白いんだろうなと思いつつ、あまり食指が動かずスルーした。

そしてその2ヶ月後、参加した読書会で井上真偽の『恋と禁忌の述語論理』が紹介されていた。私はそれを紹介した人のセンスも信頼しているので、読もうと思った。

その後、井上真偽について調べると、メフィスト賞受賞者だと出てきた。メフィスト賞には絶大な信頼をおいている。絶対おもしろい。

でも、「面白い小説」と「私が好きな小説」は必ず一致するわけではないので(『姑獲鳥の夏』は面白いことは理解できるけど好きじゃない)、図書館で借りられる『ムシカ』を借りてきた。


『ムシカ』は超絶面白くて、私の趣味だった。
舞台は無人島、出てくるのは不吉な伝承、神社や伝統儀式、天才ピアニストとぽんこつマネージャー……という王道的なミステリ要素を踏まえつつ、「音楽で蟲を操る」というアイデアと伏線回収が面白かった。

「音楽」「宗教」「幕間劇(本作では間奏)」で古野まほろを感じたし、「蟲と蟲を操る少女(たち)」には『風の谷のナウシカ』『獣の奏者』を感じた。でも、ただの模倣ではなく、自分のものとしているのが良い。

ただ、「美亜の叔母はどんな体験をしたのか?」「じゃあ手足笛の本当の呼び名は何だったのか?いつから入れ替わったのか?」「巫女たちはどうやって生計を立てているのか?」が疑問として残った。想像の余地として書かなかったのかもしれないけれど……。



井上真偽は、メフィスト賞の子ども、なんだと思う。私が中高生のときに夢中になった作家たちに、同じように夢中になり、物語の紡ぎ手になった「子ども」。だから面白いし、趣味に合うし、読んでいて色んな本のタイトルを思い出す。そんな作家と同じ時代に生きていることが素直に嬉しい。
読んでよかった。


読了日:2022/11/27

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