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不治の病

320km/hで走っている。
東北新幹線で仙台から帰宅している。
友人が不治の病になった。その御見舞に行ってきたのだ。
不治の病と聞いても、今の時代、治療法がない病気など思いつかないが、まさにその病気に友人がなったのだ。
心臓系の病気で、ひどい不整脈が起こる。腫瘍が原因だが、心臓の腫瘍はそもそもレアなのと、超重要な臓器なので、手が出せない。
頭も、体も健康なまま、どこにも出かけられず、一年を病院のベッドで過ごしている。
症状は緩やかに進行しており、コロナの状況もあったが、代休のタイミングで会いに行ったのだ。
こちらは悠長に、牛タンを食べながら、昼過ぎから面会した。
会社の同期で、入社式から地方の同じ寮に入り、文字通り同じ釜の飯を食い、同じ風呂に入り、同じ合コンに参加した。同期でも特に優しいやつで、よく部屋まで行って、話し合った。
その後、海外赴任先にも長期出張できたり、まさに社会人になって出来た、ベストフレンドだ。
そんな彼がベッドにいた。薬のせいか、呂律も少し怪しい。昔話、死後のこと、話題を選びながらもあっという間に3時間経った。
もしかしたら、次はないかもしれない。口が滑って、「最後にあえて良かったよ」と言ってしまった。どう切り上げて帰ればいいかわからない。切ない。
お互い、一日一日を生きようと言って、またねと別れた。
30代後半で、人生もそれなりに経験してきて、老いていく。出会いと別れを繰り返す。大人だから泣いたりしない。でも心は何かを感じている。
リメンバー・ミー。いつも心のどこかに彼を思って生きていこう。

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