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TINNIE PUNX - 建設的

リリース当時の状況を筆者は知らない。筆者の個人的な趣味でいえば収録曲のベストトラックは「恋のマカラニアン」だと思う。しかしそれであっても1986年にリリースされた本作をlofi Hip-Hop目線で見ても納得感のある「東京ブロンクス」のヤン冨田のフィーリングといとうせいこうのラップは素晴らしい。このコンビは1989年に「MESS/AGE」というヒップホップアルバムを完成させるがその前段としてこの曲の完成度はとても高い。

メロウなピアノとドラムのループはシンプルに短いフレーズの繰り返しは、メロウであることとヒップホップの相性の良さに気づいたごく初期のトラックではないかと思う。同時にループの概念を大きく拡張させたのではないか。オリジネイターといえるかどうかは正直なところ筆者は分からない。しかしこの時点で音楽の再定義を楽曲の完成度とともに提示した力量には敬意を表したい。

またいとうせいこうのライミングも同時に素晴らしい。貪欲な語感の追求はいとうせいこうが接近すべくして接近したヒップホップとの感性の一致を示していると思う。それは文学的であり、ハイコンテクストであり、膨大な情報量である。

この曲はオリジナルトラック以外に、モンクベリーズでのライヴ音源が公開されている。そこではブレイクビーツはよりシンプルに、畳み掛ける言葉はよりパワフルに生まれ変わっている。筆者はこのライヴ音源のMC「騒げ!」に注目する。おそらくは、”Make some noise!!”を日本語に移植したものだろう。実に的確な表現だと思うし、ヒップホップ初期にこうした語感への繊細さが浸透していたことは非常に興味深い。

(過去に書いた文章を再掲しました)

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