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Dalis Car - The Waking Hour

コラボレーション作品としてこれが成功したかというと必ずしもそうは思わない。むしろ両者発揮し切れない未消化な部分が多かったのではないかと感じる。1984年、フレットレスベースとサックスを操るミックカーンと、ゴシックヴォーカルのピーターマーフィーはどちらもバンドでは独自色を高めていったオリジナリティあふれるアプローチが印象的で、その二人がコラボレーション作品を作り上げた。

筆者の印象だが、このアルバムはJapanに寄せた曲とBauhausに寄せた曲が交互に配置されている。奇数トラックがJapan、偶数トラックがBauhausだ。そしてこのアルバムはベースをミックス上は引き立てているが作品そのものは歌モノアルバムにしたかったのではないか。そのために偶数トラックの仕上がりが素晴らしい。では4曲目のインストはどう理解するのかという話だが、ゴシックを踏まえたこのインストはボーカルトラックも本当はあったのではないかと思えてしまう。

あらためてアルバムを通して聞いてみる。呪術的なメロディーが続くHis Box、ゴシックなインストArtemis、歌が冴え渡るMoonlifeがとても美しい。また冒頭とラストの両作品はプログレ的なアプローチも感じる。これらはもう少し発展した形でも聞いてみたかったと思う。

フレットレスベースのアプローチは様々でミックカーンのプレイが全てではないだろう。しかしここでの自在なフレーズはどれも素晴らしい。そしてピーターマーフィーは艶のあるヴォーカルを発揮している。音数が削ぎ落とされていることでベースラインも声も堪能することができる。両者にとって代表作にはなりにくいだろうが愛すべきアルバムだと思う。

(過去に書いた文章を再掲しました)

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