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Chris and Cosey - Trance

元Throbbing Gristleの二人によるユニット。1982年のアルバムだという前提で聞いているがシンセウェイブ色あふれる作品だ。この音数の少なさとパーカッシブな音の配置は素晴らしい。ある意味思い切りの良さというのはあると思う。原色を連想する音づかいは分離のいいミックスの中で映える。例えば近年のコーネリアスのアプローチと違和感なくつながるアルバムという印象だ。

先見性という意味ではその後のあらゆるポップフィールドの電子音楽のルーツになり得る要素がここにはある。ミニマル、リズム、低音、サンプリング、分離。Chrisのシンセとリズムトラック、Coseyのギターとコルネットと電子音、いずれも勇気的に交差していて前年リリースされたファーストアルバムと比較しても格段に質感が向上している。

2曲目、Lostがはじまるとこのアルバムのサウンド面の進化が明らかになる。ノイジーだかさっぱりしたギターのカッティングが強いリズムトラック全体を薄く覆う。続くThe Giant’s Feetはアンビエン色強めのバレアリックなスタートから次第にパーカッシブな音が飛び交うようになり、純度の高い電子音楽が形成されていく。

Re-Education Through Labourは、サンプリングヴォイスとリズムボックスの折り重なる仕組みが圧倒的で聞き入ってしまう。これらの音の合間を縫ってギターがノイズを発散させている。また意外にもポップなSecretはヴォイスパフォーマンスが美しい。この2曲が本作のクライマックスかと思う。

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