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Brigitte Fontane - Comme à la radio ラジオのように
ラジオのように、とタイトルされたこのアルバムはフランスが誇るインディーレーベル、サラヴァからのリリース作品であり楽曲はフォンテーヌ&アレスキによる共作、演奏はアートアンサンブルオブシカゴによる1972年の作品である。当時のライナーは間章が書いている。私は間章のジャズエッセイ『この旅に終わりはない』(柏書房)からの影響でこのアルバムにたどり着いた。とても不思議なことだが文字からこのアルバムにたどり着いたということになる。
冒頭のタイトル曲のインパクトは忘れられない。力強いベースとパーカッション、あわせて管楽器がメロディーを奏で、寄り添うように、あるいはその逆かもしれないが、ブリジットフォンテーヌがシアトリカルに歌を、ポエトリーリーディングをはじめる。淡々と進む演奏はブリジットフォンテーヌの歌に合わせて静かに物語を進めていく。
その物語は、ラジオは誰も邪魔しない、あるいはそれと同じようにそれはなんでもなく単なる音楽や言葉にすぎない、それはラジオから聞こえてくるものと同じように、と歌いながらさまざまなドラマを淡々と描いている。しかし次第にシリアスな描写が入り混じるようになる。そして再び、それは誰も邪魔することのないラジオから聞こえてくるような音、と歌う。最後に、Ne partez pas(行かないでください)と繰り返す。
このメタ視点の孤独を筆者は忘れることができない。ことあるごとにこのアルバムを思い出しては聞き返す。その度にこのフォンテーヌの世界の普遍性を思う。そしてフォンテーヌを理解し(たかどうかは実際には分からないが)静かに熱のこもった演奏を残したアートアンサンブルオブシカゴの力量に感心してしまう。
(過去に書いた文章を再掲しました)
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