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Tsuki No Wa - Ninth Elegy

その頃、Tsuki No Waという名前は知っていたけれども音を聞いたことがなかった。どこで名前を知ったのだろう。リイシューされて初めて聞いたのだがかなり時代感を超えた作品だった。ギター、テナーサックス、ベースのトリオに時折パーカッションやエレクトロニクスが入り混じる。このドラムレスサウンドがある種の時間の超越の入り口だろうか。

冒頭のピアノを軸に進む「On Mother’s day」はヴォーカルを含めて少しずつ探りながら音を揃えていくインプロビゼーションのようだが次第に美しいゴスペルのような響きの表現が随所に登場する。声と楽器の折り重なる様子が素晴らしい。どこまでも淡くあらゆる音楽を飲み込んで浄化していく。

2曲目「夜明けのcoffee」はプリミティブなパーカッションとギターのミニマルなリフが意識的に流れている一方でタイトルの情景以上にサイケデリックアンビエント感の強いヴォイスとサックスがソウルフルなトラックだ。音楽だけを追っていると一聴して言語の判別ができないくらい特異な日本語の乗せ方がかえって美しい夜明けを歌い込む繊細さに繋がっていると感じる。ギターのストロークと歌をメインにした「月の重さ」という曲が不意にあらわれるが、やはり美しいゴスペルを聞いているようだ。最後の「Going Home」は中盤以降に突如あらわれるオンマイクのヴォーカルが印象的だ。

筆者は本作を聞いて、バルセロナ期前後のCINEMA dub MONKSやKATRA TURANAの諸作を思い出した。ある種の時間の経過に耐えた確固たる表現が物語のように流れていく様に聴き手が吸い込まれていく。

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