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Malakoff Kowalski – My First Piano

ベルリン出身のピアニスト。チリーゴンザレス同様にほんの少しサティを思わせる淡さを伴っている。とても絵画的なアプローチだ。Bandcampでも同アルバムは発表されていて付されたタグはネオクラシカル等一般的なものに混じって、ミニマリズムというタグがあった。筆者はそのあたりにまず興味を持った。また自ら作曲し演奏し、作品のプロデュースも行なっているというスタイルにも興味を持った。

録音状態は近年のピアノ曲の傾向と比べると若干高音域の伸びが少ないようにも感じる。これはマイクの位置や好みの問題かもしれない。がやはり本人の意図するところはあろう。極めて私的な世界のごく一部を切り取って作品化したような印象とこの音の質感は非常に相性が良いと思う。

タイトル曲である、My First Pianoは、冒頭のゆっくりと単音で響く旋律が印象的だ。その後、静かに楽曲は深く入り込んでいく。続く、Is It Spring?は、ミニマルなスタイルの主題から軽快に音符が並ぶが不思議と淡い光景が続いている。音の質感の影響かもしれない。また短調で継続する転調の影響かもしれない。

Dismanche Soirは、左手で静かにコードが刻まれ、右手は朴訥な旋律を奏でる。短調の」影を落とした旋律が美しい余韻を残す。やはりどこかサティ的な陰影を感じる。ゆっくりと和声を味わうように演奏される、65 East India Rowは7度の響きが美しい。慈しむように打鍵を味わう楽曲だ。アルバム最後のAnin Goldkingはややインプロビゼーション的でありながらミニマルな左手の動きと響きが面白い。やがてゆっくりと流れるミニマリズムに覆われながら曲を終える。そして気づくとアルバムが終わっている。

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