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メガネレンズの進化を支える日本のコーティング技術

メガネレンズにはガラスとプラスチックがありますが、日本ではレンズの95%がプラスティックです。なぜでしょうか。

1970年代までは、ガラスレンズが主流でした。光学的に優れていますし、傷が付きにくく丈夫です。プラスティックのメリットは、軽くて割れにくいこと。しかし、屈折率(光を曲げる効果)がガラスより低いため、度が強いとレンズが厚くなる欠点がありました。

ところが1980年代になると、高屈折のプラスティックレンズが登場します。ゆがみの少ない非球面設計や反射防止・水ヤケ防止など、コーティング技術も発達し、プラスティックレンズのシェアが増えました。
▶参考 コートと加工(HOYA)

HOYAレンズのコーティング例

しかもプラスティックレンズは、ガラスと違って様々な色に染めることが出来るため、ファッション性も高くなります。

ただし、プラスティック特有の弱点もあります。

※傷つきやすい
※熱に弱い

ところがこの欠点も、コーティング技術の進化で、今では解決できています。後述します。

メガネの肝はレンズコーティングにあり!

メガネは、レンズのコーティングを選ぶことで機能が大きく変化します。それゆえに、レンズを価格だけで選ぶと、後で痛い目に合う場合もあります。レンズにどのようなコーティングが施されているか、あるいはどのようなコーティングをしてもらうかが重要です。

レンズコーティングは、レンズに薄いコーティングを何枚も重ねて行く技術であり、日本でいち早く開発されました。それぞれのコートの厚みは0.001mm以下。非常に高度な技術によるものです。

紫外線防止、キズ防止、反射防止、ブルーライトカットなど、これらは全てコーティングによるものです。

イトーレンズのネッツペックコート

気になるのがプラスティックレンズの寿命ですね。通常、1年半から2年ほどです。

以前、「5年使っているメガネのレンズに傷がついてしまった。修理してほしい」と持ち込まれたことがあります。プラスティックレンズの特性やコーティングについてご存じない消費者が、実は多いんです。

レンズによっては、3~4年長持ちするものもありますが、基本的には、丁寧に扱わないと1年持たずしてコーティングが剥がれたりしますので要注意。修理はできません。

特に気をつけたいのが熱と酸。コーティングの大敵です。このことを理解してメガネを使えば、一層長持ちします。

※レンズは暑さや急激な温度変化に弱い
 60度以上になると、クラック(レンズのひび割れ)が発生します。車内ダッシュボードに放置するのは危険です。風呂、サウナ、ドライヤーなども大敵です。

※石鹼を使ったり、ぬるま湯は厳禁
 ぬるま湯でも、熱に弱いコーティングだと剥がれてしまいます。メガネは水で洗ってください。また酸が苦手なので、石鹸や弱酸性のものを使うとコーティングが浮き出してしまうので、必ず中性洗剤を使ってください。

※乾いたままでレンズを拭く
眼に見えなホコリが付いているかもしれないレンズを乾拭きすると、コーティングが傷ついたり、剥がれたりします。拭く前に水洗いするか、専用クリーナーを使ってください。

※水滴を放置するとシミになる
雨降りや、ビーチなどのレジャー時に水滴がかかる時があります。そのままにしておくと、水分に含まれた汚れがレンズに吸着されて取れなくなる場合もあります。濡れたレンズはすぐに拭いてください。

レンズコーティングの種類

現在のプラスティックレンズには基本的なマルチコートが施されています。紫外線防止、反射防止、汚れ防止という3つの機能です。とはいえ紫外線防止は380㎚前後であり、有害可視光線と言われる電磁波420㎚をカットしていませんので要注意。

反射防止系コート(マルチコート)=紫外線、反射防止、汚れ防止
よほど安いレンズでもない限り、通常装着されています。

この基本レンズだけでОKという人もいますが、当店では、使用環境に適したコーティングを施して使う人が増えています。

紫外線防止系コート=420㎚カット、肌を痛める近赤外線防止
ブルーライトカット=PC、パソコン作業で眼を守る
耐衝撃系コート=スポーツ、アウトドアに
汚れ防止系コート=汚れやすい職場に最適
曇り防止系コート=マスク着用のエッセンシャルワーカー向き
静電気防止系コート=埃や花粉を寄せ付けない
キズ防止系コート=プラスティックの欠点をカバー
熱・傷対応コート=95℃の高温に耐え傷にも強い

沖縄の場合、強い紫外線による眼疾患発生率が高いので420カットのコーティングをオプションとしておススメしています。(参考オプション価格3300円)

また、車内放置、暑い職場環境、キズなどが気になる方には、熱、キズ、耐水、静電気に強いヒートガードコートをおススメしています。なんと1年間の保証付き。(オプション価格3300円)


伊藤光学のヒートガードコート

そのほかにも、眼の手術をした方のグレア対策にもなるコントラストレンズや、芝や起伏を読み取るゴルフ専用レンズ、スポーツや釣り、運転時に活躍する偏光レンズ、色が変わる調光レンズなど、レンズの世界はものすごく広がっています。ゲームを左右するeスポーツ専用レンズもあるほどです。

偏光レンズ一つをとっても、海釣り、渓流、バスフィッシングそれぞれに合わせたコーティングレンズがありますし、調光レンズにしても、様々な機能のものがありますから、ニーズに合わせて選べます。

その結果、レンズには価格差が発生しますが、ファッションの観点ではなく、「視え」と「眼を守る」機能を主眼にした場合、レンズの選び方がとても重要になります。そのせいか最近は、使用環境に合わせてレンズを変えたメガネを使い分けている方も多くなりました。

特におススメできるのが、新発売のトライガードというレンズ。トライガードは、ほぼ全ての視る機能を装着した画期的なコーティングレンズです。夜の運転もOKで、PC画面の見やすさを向上させ、眩しさを軽減しコントラストを高めています。つまり、1本のメガネで全てを賄えるオールマイティレンズ。

特定の波長をコントロールすることで、視界のコントラストをハッキリさせ、PC作業から夜間の車運転までクリアにしてくれるマルチパワーを発揮します。

トライガード=昼夜、内外オールマイティ
日中・夜間・屋内・屋外 全てのシーンで機能性を有する万能型レンズ


トライガードコートの視え方

レンズの世界は日進月歩。

最初に、プラスティックレンズの寿命を1年半から2年と指摘しましたが、コーティングによっては長持ちさせることも可能となりました。メガネを購入する時、あるいはレンズを交換する時は、レンズの度数だけでなく、コーティングについてもメガネ店さんに相談してみてはいかがでしょうか。