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依頼者の感想~次に向かう力

依頼者から事件後の感想をいただきました。

和解や示談をするときは、
和解金(示談金)以外に債権債務がないことが確認されるのが普通です。
「これで争いを終える」ということが合意されるので、
後々何か生じたとしても、
基本的に追加の請求はできないことになります。

この案件は、
交通事故で重篤な後遺障害を負っていったん示談したけれども、
その後、さらに予想外の後遺障害が生じたという事案です。

最高裁は、
①全損害を正確に把握し難い状況の下で、
②早急に
③小額の賠償金をもって
示談がされた場合は、
例外的に、
予想できなかった不測の再手術や後遺症が示談の後に発生した場合の追加請求は妨げられないとしています。

しかし、
本件は、
最初の示談の際、
事故から数年が経過して状況も落ち着いており、
弁護士の関与もあって、
相当程度まとまった額の賠償金が支払われているので、
最高裁の示している例外には当たらないと考えられる事案でした。

理屈ではそうなりますが、
依頼者の被った被害としては、
示談後の後遺障害の方が現実の生活面への打撃が大きく、
依頼者の中で、
そのまま黙って済ませるわけにはいかないという気持ちが大きかったため、
受任することになりました。

私が最初にしたのは、
新しい後遺障害について、
自賠責の後遺障害等級認定を受けることでした。

症状からすると、
最初の示談の際に受けている後遺障害等級を下回ることが予想されましたが、
保険会社からは、
新しい後遺障害と事故には因果関係がないと争われることが予想されたため、
因果関係を認定するための資料を作る意味合いを含めてのことでした。

自賠責の結果は、予想通り、
最初の示談の際に受けている後遺障害等級を下回るもので、
支給額としては0円でしたが、
事故と新しい後遺障害の因果関係を認めてくれていましたので
最低限の武器は手にできました。

そこで、保険会社に、
示談後の新しい後遺障害による損害を請求しましたが、
一度示談した後の請求には応じられないと、
即座に否定されました。

それで訴訟を起こしましたが、
自賠責の結果にもかかわらず、
保険会社は、
新しい後遺障害と事故には因果関係がないとして争ってきました。

訴訟の中で保険会社が取り寄せた医療記録(カルテ等)は
段ボール一箱分。

保険会社からは、
因果関係を否定する意見書の提出を準備しており、
時間がかかっているとして、
1年以上待たされ続けましたが、
最後は、
「新しい後遺障害と事故との因果関係は争わない」
という書面が提出されました。

因果関係の論点がなくなってほっとしたのもつかの間、
示談後の追加請求の可否という根本的な問題は残っています。

こちらからは、
被害の実情を繰り返し強く訴えましたが、
保険会社は追加請求はできないとの一点張り。

その中で、裁判所から、
後遺障害としての請求部分(後遺障害慰謝料・逸失利益)は
一度目の示談の中で評価されているので認められないが、
入通院の部分については、請求の半分を認める、
という方向で和解案が出され、
基本的にこの方向で和解に応じることとなりました。

被害の深刻さにかかわらず、
本件は、示談後の請求ということで、
もともと請求が認められない可能性の高いものでした。

それでも請求していく、という選択をしたのには、
第二の後遺障害の被害の大きさからすれば、
うなずけるものがあります。

和解の結果それ自体については、
依頼者は納得できていないと思います。

しかし、
ここまでやっての結果であるということで、
結論を受け入れられました。

事件後に依頼者と話したとき、
示談後の後遺障害という事案で悩んでいる人に、
こういう事案もあるということで
勇気づけられるいいです、と話されていました。

それで、少し詳しく事案の経過もご紹介した次第です。

訴訟は、結果だけがすべてではない、
プロセスの中で、次に向かう力が生まれる、
と思う案件でした。

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(70代・男性・交通事故)
今回は妻の交通事故の後遺症の件でお世話になりました。
一度示談が済んだ案件でむずかしい事でしたが、
事故の後色々な事情で示談をしない訳にはいきませんでした。
示談の後に出た症状は示談の時の等級に含まれているとの保険会社の主張でしたが、
示談の後に新しく出た症状なので、新しい等級で算定してほしかったと思いました。
新しい症状は入院費用の半額が認められたが、
後遺症に対する司法判断が聞けなかった事が残念です。
今後は私達のように示談後後遺症に悩む人も多勢いられる事と思います。
この件を礎として弱者を助ける味方としてお力を発起(ママ)して戴き度いと期待しています。
今後は生活を切りつめて残りの人生を送って行こうと思っています。
今回は難しい議案でしたが、ありがとうございました。

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最後までお読みくださり、
ありがとうございました。

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