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銭湯と生ビールと蛭子さん

自宅から徒歩15分ほどの所にある銭湯にたまに行く。スーパー銭湯ではなくいわゆる銭湯だ。一応温泉と書いてあるが薄めてあるらしい。近所というほど近くは無いけど中はきれいで風呂の種類も多い。刺青オーケーなので反社会勢力系の人もよくいる。

設備としては大絶賛するほどではないけど、休憩スペースにカウンターがあってなぜかここの生ビールがとても美味い。風呂に入るというよりここには生ビールを飲むために来ていると言ってもいい。風呂上がりというバイアスがあるにしても駅前の居酒屋よりよっぽど美味い。

泡の細かさとジョッキの温度が絶妙

休憩スペースにあるテレビではNHKが映っており、漫画家の蛭子能収さんが
散歩しながら絵を描くという番組をやっていた。蛭子さんは認知症を公表しており言動があやふやな場面が多々あった。下北沢で健康麻雀をやる場面でギャンブル好きの蛭子さんの事だから他の記憶が曖昧でも、麻雀に関しては見事な腕前を見せるみたいなシーンを期待したけど牌の並べ方すら分からない様子だった。
そうした色々な場面でエッセイ風に4コマ漫画を描いていく。かつての蛭子さんタッチの絵もあれば判別不明な絵もあった。

街を飛び出して富士山の麓で富士山を描く場面があった。水彩絵の具を使っている所を初めて見たけど、イーゼルを前にしてパレットに絵を描こうとしていたので本人も慣れていないのだろう。
水色と青とときおり赤い絵の具を使ってキャンバスを埋めていく蛭子さん。輪郭という物がなく全く富士山の形をしていない。たまに上下をひっくり返して描いている。
すごくいい絵だと思った。今の蛭子さんには葛飾北斎の浮世絵や土産物屋にあるポストカードに描かれた富士山の記憶などないだろう。過去のイメージに囚われる事なく純粋に富士山がこう見えているんだろう。先人の呪縛から解放された創作活動ほど自由な物はないと思った。

生中一杯と小ジョッキ一杯を堪能して外に出るとすでに暗くなっており雨が降っていた。傘ってずいぶん不自由な物だなと思って帰路についた。

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