見出し画像

得点と失点と勝ち点と-何失点までなら勝てるのか?-

「攻撃的」と「守備的」

これはサッカーに限らず、スポーツにおいて、プレースタイルの最もメジャーな評価軸である。プレースタイルの違いは試合に勝つための方法の種類が違うだけであり、試合に勝利するという目的は同じである。

ところで、この攻撃的・守備的という表現の定義は何だろうか?
シュートの数が多ければ攻撃的なのだろうか?セービングやシュートブロックの数が多ければ守備的なのだろうか?

多くの場合、得点数や失点数をもとに攻撃的・守備的と評価される。
それでは、平均得点・平均失点がどの程度であれば、攻撃的・守備的なプレースタイルを勝利へと結びつけることができるのだろうか?

そこで本稿では、2020年のJリーグの試合結果とその得点・失点数の3変数から、「何得点すればどのくらいの割合で勝てる」あるいは「何失点までなら勝つ可能性がいくらある」のかを皮算用したいと思う。

2020J1リーグの傾向を掴む

データはJleague data siteから引用した。

まずは、試合結果とスコアの傾向をつかむため

縦軸を失点数、横軸を得点数とし、それぞれの試合結果を各点としてプロットし、等高線を示した。また併せて、縦横軸で密度プロットを示した。
(y=xで線対称の分布)

ある程度は予想していましたが、1得点(1失点)のロースコアに分布が集中しており、3得点(3失点)以上の試合はかなり少ない。

画像3

次に、各スコア別の試合数を見た。

一番多かったのが1-0(58試合)でした。それに次いで、2-1(43試合)。

Group1;得点数、Group2;試合結果、Group3;失点数、x;試合数
※引き分けは両チームでダブルカウントしてしまったので2で割ってください

画像6

画像7

これまでの結果から、「複数得点を記録した試合は少ないのではないか」と思い、得点数の分布を調べた。

すると、1得点の試合が最も多く、全試合の34%。次に0得点の試合が26%。0得点、1得点だけで全試合の60%を占めていました。次に多いのが2得点で21%。3得点は14%、このあたりから大量得点と言っても良いのかもしれない。Jリーグ各チームの実力が伯仲しているからだろうか。

画像11


何得点すれば勝てるのか?

次に得点数と試合結果の関係を調べる。

各得点数に該当する試合数の密度プロットを結果ごとに示す。
0得点では当然大きく負け越している。1得点ではおおよそ拮抗し、2得点から勝ち越しはじめ、3得点以上ではほとんど勝っていることがわかる。

画像3

具体的な試合数は下記のとおりである。
Group1;得点数、Group2;試合結果、x;試合数

画像4

0得点 (L:117, D:40, W:0, total:157, win_rate:0%)
1得点 (L:87, D:64, W:58, total:209, win_rate:27.8%)
2得点 (L:30, D:26, W:73, total:129, win_rate:56.6%)
3得点 (L:4, D6, W:74, total:84,        win_rate:88%)
4得点 (L:0, D:0, W:22, total:22,       win_rate:100%)
5得点 (L:0, D:0, W:7, total:7,           win_rate:100%)
6得点 (L:0, D:0, W:4, total:4,            win_rate:100%)

ここで得点数別の勝利割合(win_rate)を算出し、プロットした。
3得点(88%)まではリニアに増加し、それ以降は100%であった。

この勝率を見てわかるように、J1リーグで3点以上取ればほとんど勝てることが予想される。川崎フロンターレの鬼木監督が「1試合3得点」という目標を掲げているが、J1リーグの実態を踏まえた目標である。

画像9


何失点までなら勝てるのか?

最後に失点数と試合結果の関係を調べた。

得点のグラフと対照的になるため、無失点では大きく勝ち越し、1失点で拮抗し始め、3失点以上するとほとんど負けていることがわかる。

画像2

具体的な試合数は下記のとおりである。
Group1;失点数、Group2;試合結果、x;試合数

画像5

0失点 (W:117, D:40, L:0, total:157, win_rate:74.5%)
1失点 (W:87, D:64, L:58, total:209, win_rate:41.6%)
2失点 (W:30, D:26, L:73, total:129, win_rate:23.3%)
3失点 (W:4, D6, L:74, total:84,        win_rate:4.8%)
4失点 (W:0, D:0, L:22, total:22,       win_rate:0%)
5失点 (W:0, D:0, L:7, total:7,           win_rate:0%)
6失点 (W:0, D:0, L:4, total:4,            win_rate:0%)

無失点の時のwin_rateは74.5%とかなり高い。先ほど示した得点別試合数から、J1のチーム同士が対戦するとby chance で1-2得点できるという期待に起因すると考える。失点を1までに抑えれば、高い確率で勝ち点を得られるが、複数失点してしまうと途端に難しくなることが推測される。守備的なチームがJ2から昇格しても残留しやすいという傾向はこれによるものなのかもしれない。

画像8

画像11

まとめ

2020シーズンJ1リーグの試合結果とそのスコアを分析したが、本稿で取り上げた内容は複雑な要素が多数相互作用する事象をかなり粗く分析したにすぎない。

そのことを断ったうえで、

「攻撃的なチームなら2得点以上」
「守備的なチームなら1失点以下」

を実現できていれば、コンスタントに勝ち点を積み上げることができると考える。もっとも、狙い通りにゲームプランを実行できているということはゲームをコントロールしているのと同じであるため、当然と言えば当然の結果である。


画像10


雑感

これは以前、得点数と失点数の勝敗パターンから、「n点とれば勝ち点Xくらいになる」というモデルを作ろうとしたものの、案の定小中先生がもっといいやつを作っていたため、お蔵入りしたやつです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?