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企画展「科博の標本・資料でたどる日本の哺乳類学の軌跡」に行ってきた!

最近、上野の国立科学博物館の特別展『海-生命のみなもと-』がSNSなどでとても話題ですが、もし8/16までに科博周辺に行くことがあったらおすすめなのが、企画展『科博の標本・資料でたどる 日本の哺乳類学の軌跡』です。

クリックすると公式のPDFチラシに飛べます!

海展などの特別展(大人2000円)とは違い、規模は小さいのですが科博の常設展のチケットの範囲内で見ることがきできます。

日本の哺乳類研究学術団体ができて100年

今年2023年は日本哺乳類学会の前前前身くらいの団体(おそらく日本哺乳動物學會のことかと思われる)ができてからちょうど100年という節目だそう。また、日本の哺乳類が世界に紹介されるきっかけとなった、シーボルト来日から200年でもあるということで、今回の企画展が開催されることになったようです。

展示は第1章〜第3章で成っており、私的にまとめるとざっくりこんな感じの内容↓

  • 第1章:日本の哺乳類学の歴史を先人たちに学ぶ

  • 第2章:科博の哺乳類標本コレクションと標本の製作技術

  • 第3章:多様化する現在の哺乳類学とこれからの哺乳類学

ちなみに私がいちばん興味深く拝見したのはこの中でいうと第2章です。

普段は展示されていない研究用標本の数々

普段、私たちが博物館に行ったときに目にするのは本剥製と呼ばれる展示用の毛皮標本や骨を組み立てた交連骨格といったものがほとんどです。

しかし、この企画展では、普段あまり表には出てこない研究用の仮剥製やフラットスキン、鞣し皮や液体標本などもたくさん見ることができます。まるで科博のバッグヤード(?)をのぞき見しているようで面白いです!

公式サイトによれば、これらの展示については、私が大好きな『標本バカ』の著者であり、本企画展の監修者である川田伸一郎先生がお気に入りの標本を厳選したんだそうです。また今回の各展示物の説明文は標本ラベル風のデザインになっていて、これも『アラン・オーストンの標本ラベル』を書かれている川田先生のこだわりかな?!と思うなどしました。

仮剥製(内部に綿が入っていて立体的)
フラットスキン(中は厚紙で省スペース!)
世界三大珍獣の本剥製

また、各種標本の展示だけでなく、製作過程や製作技術、どんなときにその形式の標本が適しているのかなどがわかりやすく記載されています。今まで、個人的に博物館でのお手伝い(ボランティア)をする中で、ぼんやりとしか理解できていなかったことが頭の中で整理され、クリアになった気がします。


キリンのファッジの剥製を作ったのはあの人だった

もうひとつ。印象に残っているのは、本剥製の中でとくに目立っていたファッジというキリンでした。明治時代に来日した2頭のキリンのうちの1頭で、大きさもさることながら、このポーズも目を引きますね!

シルエットがまた良い
少年世界

キリン研究者の郡司芽久先生がご自身のTwitterにも書かれていたのですが、これまでこのキリンの本剥製は誰の手によってどのように作られたのかは謎だったそうです。しかし『少年世界』という昔の子ども向け雑誌にその詳細が掲載されていて、最近になっていろんなことがわかってきたということでした。ざっとググった感じだと小説、史伝、科学、図書案内など割となんでもありの雑誌だった模様。企画展では、実際の雑誌そのものも展示されています。

ちなみ剥製を作ったのは忠犬ハチ公の剥製をつくった坂本喜一さん(日本を代表する剥製師)だったとのこと。

詳しくは下記の論文にまとめられています。

文字文字しくない哺乳類学の歴史展

歴史展というと、どうしても解説がいっぱい、年表がいっぱいで文字文字しい展示になりがちという印象があります。

でも、本企画展は先人たちの等身大風イラストパネルがそこらかしこにあって何か言っていたり、科博が所蔵している標本や資料を惜しみなく展示に使っていたりするので、視覚的にも楽しめるものになっています。

決して大きな企画展示ではありませんが、熱量を感じる展示でした。死んでいる動物からつくる標本剥製にあまり良い印象を持っていない方、そもそも標本についてよく知らない方にもぜひおすすめしたいです。どんな目的があって、どんな歴史があって(研究用の)標本が作られているのか?そういった背景を知ると今までとはまた違った見方が生まれるかもしれません。

8/16までと閉幕まで1ヶ月を切っていますので、気になってる方はお急ぎください!

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