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網膜色素変性症③ヘルプマークの使い方が分からない

★前回までのあらすじ★

難病医療費等助成制度の申請をしたが、1年間使うことはなかった。しかしヘルプマークをもらえたので良かった。


ヘルプマークとは

義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです。

東京都福祉保健局

少し前に、某有名歌手のグッズが、ヘルプマークに酷似していると炎上した。
私はその歌手が好きだったが、ヘルプマーク使用者としてはまあちょっとご遠慮いただきたい案件だなと思った。意図あって身につけているものが、ただのアクセサリー扱いされると困る。

私がヘルプマークを入手したのは、区の保健センターでだった。したがってそれは、心身の問題が証明される場合に限り、専門の機関でもらえるものだと思っていた。
しかし改めて調べてみたところ、少なくとも都では、口頭の申告だけで駅とかで普通にもらえるらしい。ま~~~じで? どういうやり取りをするのかは分からないが、結構気軽にもらえるようだ。それじゃ、「特に配慮とかいらんけどヘルプマークカワイイから適当に嘘ついてもらっちゃお」みたいなこともできるわけだ。
実際ネットを見ていると、「ヘルプマークはメンヘラのアクセサリー」と捉えている人もいるようだ。果ては悪用してナンパしてるオッサンもいたとか。全部ネット情報だから鵜呑みにしてはいけないけれど、まあ、なくはない話だ。
誰でも簡単に入手できる以上、その意味は使い手と受け手のモラルにかかってくるだろう。そうなると、ヘルプマークは「お気持ち表明」程度の効果しか持たないのだろうか。

何のために付けるのか

ヘルプマークを付けるメリットのひとつに、「電車で座りやすい」ことが挙げられる。
譲ってもらいたい、とまではいかないまでも、見た目は健常だから優先席に座りづらい、という人も、ヘルプマークを付けることによって幾分座りやすくなる。付けたうえで座っていても年寄りに文句を言われた、という悲しい話もあったが、譲ってもらえた、という話もちょいちょい見かける。
あとは、発作を起こしやすい人なんかは、発作時にどういう対応をしてほしいか書いた紙を、マークの裏に貼ったり同じケースに入れたりしているらしい。これは周囲の人にとってもありがたい。例えば定期入れに同じ紙を入れていたとしても、他人が発見してくれる可能性は低いだろう。その点ヘルプマークは見つけやすい。

私もヘルプマークを付けてはいるが、その目的は、上記のいずれにも当てはまらない。視野が狭いだけだから、電車の中でじっと立っている分にはさほど支障はない。特に発作もない。状況にもよるが、殊更援助を求めることも今のところはない。

ではなぜ付けているのかというと、何となく人が避けてくれるからだ。

ヘルプマークを付けた人が目の前を歩いていたら、私は慎重になる。必要以上に近づかず、無理に追い越そうとしたりもしない。何が起きるか分からないからだ。不用意にぶつかったりして倒れちゃったらどうするんだ。ヘルプマークだけでは、その人がどんな困難を抱えているのか分からない。困っている様子でもない限り、適度に距離を置いて歩くのがベターだ。

……という思考に、背後の人が至ってくれることを期待して、私はヘルプマークを付けている。

要するに、普通の人が「まあ見えるだろ」って思う範囲でも私見えてないんで急に追い越されたりするとぶつかっちゃうこともあるし近づかないほうが無難よ~!!ってことを示したいのだ。あと階段降りてるとき急に段差の境目分かんなくなってびくって止まったりしちゃうことあるけどメンゴメンゴ!とか、できるだけ隅っこのほう歩きたくてメンゴメンゴ!とか、色々な思いを込めている。マークはリュックに付けているので後ろからしか見えないが、本当は前後左右に付けたい。というかもう、

できればこうしたい。
まあ、そんなことしても歩きながら動画見てるセルフ五感イップス野郎とか集団しか目に入らない居酒屋の客引きとかは気づきもしないだろうけど。チッ

で、マークの効果はいかほどかというと、比較的歩きやすくなったように思う。少なくとも、至近距離で追い越してくる人は減った(オッサンに後ろから手で払いのけられたこともあったが。チッ)。階段でも、段のあるところではなく、余裕のある踊り場でさっと追い越してくれる人が多い。ありがとうございます。恐れ入ります。念を送っています。

しかし、この使い方があっているのか私には分からない。これはある種、ヘルプマークの「得体の知れなさ」を逆手に取ったような使い方だからだ。

「ヘルプマーク」で検索すると、続く単語の候補に「気持ち悪い」「これ見よがし」「関わりたくない」「頭おかしい」「ずるい」などのネガティブなワードが散見される。ひとえに知識不足によるものだと思う。人間、よく分からないものにはとりあえず嫌悪感を抱くものだ。あるいは何か、個人的に嫌な経験でもしたのかもしれない、ヘルプマークを付けた一見元気そうな人に席を譲るよう強要されたとか。先にも書いたが、結局は個々人のモラルの問題だから、全員を納得させることは難しいかもしれない。それならそれで別にいい。気持ち悪い、関わりたくないと思うならぜひ近づかないでいただきたい。その方が私にとってはありがたいのだ。
ただこれは私に限っての話で、電車で立っているのがつらい人や、積極的な支援を必要とする人ももちろんいる。そういう方々のことを「これ見よがし」とか「ずるい」とか思わないでほしい。ヘルプマークを持っていたがゆえに見知らぬ人から攻撃されたなんて話も見た。そういうことをする人は知識を持ったところで変わらないかもしれないけど、何となく気持ち悪いとか思っている人は、さらっと以下のページを読んでみてください。短いし、問題点にも触れていて分かりやすい。

【3分解説】ヘルプマークとは?その意味を分かりやすく解説! - Sports for Social

ヘルプマークは単体だと曖昧だ。ぱっと見、なんか…なんかあるんだな!!ということしか伝わらない。だから「ここがこう悪いのでこうなりますけどご理解ください」ということを表した缶バッジなんかを追加で付けている人もいる。今のところ、「視野が狭いのであんまり近づかないでください」というバッジは発見できていない。とりあえず目が…なんか…アレだぞ!ということを示すために目玉の描かれたバッジでも付けようかと思ったのだが、あんまりいい感じのがない。マグリットの《偽りの鏡》のバッジがあったらぜひつけたかったのだが。
それに、目が悪いことを通りすがりの不特定多数に告げることは、それはそれで怖い気がする。「こいつ目悪いならスリしやすいぜ」と考える人が全くいないわけではないだろう。要は弱点をさらすことになるのだ。怖い。前世が北関東のヤンキーだった影響で、私は自分の弱点をさらすことについては敏感だ。前世は個人の見解です。

そんなこんなに頭を悩ませながら、視界良好な日中は鞄のポケットに隠し、夜になるとヘルプマークを引っ張り出す日々である。結局人の優しさに頼るしかないマークだが、これからも使い方を模索していきたいと思う。
とりあえず人混みで歩きスマホしてるやつはいっぺん転んで前歯折れ。あと夜道の自転車は忘れずライトつけてくれまじで。

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