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念力処刑集団マング

  1

 それは、長らく中央アフリカの特定地域に留まっていた。

  2

 ジョナサン・ハーロウが自身の変化に気付いたのは、物流倉庫での荷下ろし中に倒れ、三日後に目覚めたときだった。
 妻のキャシーは、よろめき起きてきた彼を気遣うどころか、今すぐ職場に復帰しろと言った。

「あんたが家にいるだけで汗臭くて息が詰まるのに、うんうん唸られどおしじゃ、静かにテレビも見られやしない」

 テレビから迸る複数人の笑い声が窓ガラスを細かく揺らす居間で、聞き取りづらい鼻声で罵られるうち、彼は相手をにらみつけずにはいられなくなった。

 だまれ、誰の稼ぎで息をしていられると思ってやがる。

 すると、妻はにわかに苦しみだし、両目と鼻と口から血を流してぶっ倒れたのだった。

 一週間後、ジョナサンはシティ・バンクへ強盗に入り、三十二人を念力殺して、警官に射殺された。
 その腸から発見されたのが、世界ではじめて記録された〈マング〉である。

【続く】

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