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空隙

「ふるえ」がくると、毎度のことながら、おれはなんだかうれしくなる。

それは予言だ。
おれの「注文」を、〈公社〉が受注、決済、発送まで済ませ、おれの魂に埋め込まれた「契約」を通して、しらせてくる。
物理的な現象に先立つ、霊的な確信。
未来が確約されたことに、おれのこころは「ふるえ」にふるえるのだった。

いっぽう、からだのほうはというと、背にしたコンテナに着弾するたびに、物理的にふるえている。
これだって予言だ。
このままだと、押し寄せるパワーアーマーの群れが撃ち出す十センチボルト弾をあびせられ、この赤茶けた惑星の荒れ果てた飛行場で、墜落したキャリアーのコンテナの陰にくぎづけされて、この作戦目標が罠だったということを、衛星軌道上の母艦にしらせることもできず、たまなしのライフルを抱えたまま死ぬのだと、そういう予言だ。

だけど、そっちの予言は成就しない。

霊は弾よりはやいのだ。

そら、きた。

この時空を構成する霊素が、輝きながらおれの目の前に集まってくる。
霊素が作り出す光の帯、その中に、一つの形が浮かび上がる。

予言はなされた。

おれは物理弾ライフルを捨て、クロームに輝く虚霊砲を握る。
コンテナの陰から飛び出した。

稼働を始めた虚霊砲は、物理的にふるえ、霊素の空隙を撃ち出す。
それは、視界を埋め尽くすパワーアーマーの群れ、そしてやつらが撃ち出すボルト弾から、霊的な結合を解き、霊素に還元していく、未来の予言だった。

もちろん、こっちの予言は成就する。

パワーアーマーも、反撃の射撃も、次々と分解されていく。
残る霊素のきらめきは、おれの左手に埋め込まれた吸収器が吸い込み、次なる「注文」に当てる。
次はそう……これと、これだ。

虚霊砲をきらめきがとりまいた。
一方、おれの肩に重みがずしりとのしかかってきた。

おれはうれしくなりながら、両肩のフローターを操作し、宙に舞い上がる。
追加された空隙を撃ち出しながら、他のキャリアーを目指す。

【つづく】

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