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逆噴射プラクティス解題 #3

目次

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ごあいさつ

 こんにちは、うさぎ小天狗です。

 この記事は、二〇一八年十月八日から三十一日の間に開催された「逆噴射小説大賞」の投稿作品の自主解題です。
 何を考えて書いたか?
 どんなイメージなのか?
 今後の展開の予定は?
 などを、簡潔に語る予定です(たくさん語るなら続きを書いたほうがいいですからね)。

 各回ごとに四作品ずつ解題していきます。
 今回は投稿第五作目から第八作目を扱います。

 なお、洗濯ものをたたみ終えた下品ラビットがコメントを書き込みたいと言っているので、彼のコメントも併せてお楽しみくださいませ。

 それでは参りましょう。

No.05 「食人鬼洞(『双侠伝』より)」

 武侠小説はぼくの好きな小説ジャンルの一つです。最近では『Thunderbolt Fantasy』などの本邦発の武侠ものが増えていますが、もともとは中国のチャンバラ(ファンタジー)小説。ハードボイルドで車田正美な展開とメンタリティが特徴の「古龍」氏や、歴史的な事実に材をとった「金庸」氏(先日惜しくも亡くなられました)などが有名で、本邦でも翻訳が読めます。ぼくは後者の「金庸」先生の小説に、テレビドラマ版をきっかけにハマって、全巻集めてしまったくらい、どっぷりはまってしまいました。
 そこへ、もう一つ大好きな小説ジャンルであるヒロイックファンタジーを合わせて、さらに大好きなジャック・ケッチャム味を足した、ベーコンエッグダブルバーガーみたいなものが出来上がった次第です。

下品ラビット:
明らかに好き放題やってやがるよな。双侠、つまり二剣士の登場前に今回の怪物を紹介するんだから、インスパイア元は「七人の黒い僧侶」だろうな。

ジャンル
武侠小説、ヒロイックファンタジー、スプラッタホラー

参考・引用文献
『多情剣客無情剣』(古龍/岡崎由美・訳/角川書店)
『死神と二剣士』(フリッツ・ライバー/浅倉久志・訳/創元推理文庫)
『オフシーズン』(ジャック・ケッチャム/金子浩・訳/扶桑社ミステリー文庫)

No.06 「七人の妖術士」

 ジャン・パルーという人が、「妖術は叛逆者たちの希望の的である」「妖術は必らず、内乱や外国との戦に苦しむ国々とか、自然の災害に悩む国々で行われる」と書いています。また、「妖術使は、男女を問わず、社会の敵という名を負わされた犠牲者にすぎない」とも。
 この記述から、「レジスタンスとしての妖術」を想像したとき、ある映画とのシナジーが生まれました。つまり、「敵に占領された故国を開放するため、決死のレジスタンスを行うために妖術士となるものたちの話」です。
 このお話には元となった映画があり、それには元となった事実があります。その点で、この話は山田風太郎の忍法帖的な展開になるでしょう。

下品ラビット:
ある事実をもとにした映画をもとにしているんだから、話の筋はできているよな。あとは資料をどれだけ読み込むか、状況を作り上げるかだ。ぜひとも無常な結末を見せてほしいぜ。

ジャンル
ファンタジー、忍法帖、ミリタリーアクション

参考・引用文献
『妖術』(ジャン・パルー/久野昭・訳/白水社文庫クセジュ)
『くノ一忍法帖』(山田風太郎/角川文庫)
『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』(監督:ショーン・エリス/出演:キリアン・マーフィ、ジェイミー・ドーナン)

No.07 「PULPなんてPORNOの綴りが間違っただけ?」

 おかしなタイトルは、伝説的なSF作家「ハーラン・エリスン」の、これまた伝説的なSF短編集のタイトルの引用です。今回、パルプ小説を書くにあたって、ぼくが常に念頭においたのはこのエリスンでした。
 すなわち、ジャンルの枠にとらわれることなく、書くべきと思ったことを書くこと。エリスンの小説はいつも、明らかなエンターテインメントでありながら、それ以外のものともなっています。社会風刺あり、批評あり、文学あり、実験小説あり……ならば、「パルプ小説とはこんなものであろう」という先入観を打ち破ってみたいと思って、こういうタイトルをつけたのでした。
 こういうタイトルにふさわしい内容に仕上げていきたいと思うことです。

下品ラビット:
活かしどころを間違えれば、魔法少女ものの粗雑なパロディにしかならないだろう。一歩でも大御所エリスンに近づけるよう、切磋琢磨するしかないさ。でないと草葉の陰のエリスンに怒鳴られるぜ。

ジャンル
SF、魔法少女もの、ブラックコメディ、文体実験

参考・引用文献
Harlan Ellison "Love Ain't Nothing But Sex Misspelled"

No.08 「秘剣アズミノ」

 ポストサイバーパンクSFの一つに、パット・キャディガンという人の「スシになろうとした女」というのがあります。外宇宙の過酷な環境に適応するため、地球の海生生物に似た姿に自らを改造していった人類の話です。作中では、改造された人類を「スシ」と呼んでいたのです。パット・キャディガンはギブスンやスターリングと同期の、第一期サイバーパンク・ムーブメントの渦中にいた一人で、そういう人らしいフェミニズムSFでもありました。
 そこから、イデオロギー的な部分をそぎ落として、ポストヒューマン的なSFだけ取り出し、剣豪小説めく感じにしてみたらどうかなあ、という発想です。謎の「マキモノ」はいったいなにものなのか……は、もうすでに決めてあります。

下品ラビット:
特殊な用語を詳しく説明しないで異世界感を醸し出すつもりと見たぜ。説明的にならないようにするのはもちろんだが、だからといって独りよがりにならないよう、わかりやすく書いてほしいな。

ジャンル
SF、剣豪小説、ポストヒューマン

参考・引用文献
『武装島田倉庫』(椎名誠/新潮文庫)
『忍者月影抄』(山田風太郎/角川文庫)
「十兵衛両断」(荒山徹『十兵衛両断』新潮文庫)


以上、投稿第五作目から第八作目の解題でした。

では、#4で、またお会いしましょう。

(うさぎ小天狗)


イラスト
『ダ鳥獣戯画』(http://www.chojugiga.com/


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