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ぼくと、マリィ

 よく晴れた日曜の午後だった。さわやかな風が吹いて、コルビ草の羽根つき種子が舞い飛んでいた。
 ジョナサンは、いつもならこの太陽光を反射してきらきら輝く種子が飛ぶのを見ると、心が和むのだった。
 しかし、その日はそうはいかなかった。

 その日、彼は初めて〈女〉に会ったのだ。 

 三時間後、馬車が館に着くと、ジョナサンは、前夜の雨でしめった土を蹴ってポーチに駆け込んだ。
 前庭で剣の修行をしていた兄たちの笑い声を背中に聞きながら、ポバ樹の両扉の右側だけを開けて、館に入った。

「土を払いなさい、ジョナサン」

 マリィの声を耳にして、彼は息がつまるのを感じた。帰途の最中ずっと腹にたまっていた重いものが喉のところまでせり上がってきた。

「マリィ!」

 エントランスを掃除していたマリィが、無限軌道をきしませながら近づいてきた。
 彼はマリーの木製の胸に飛び込んだ。
 マリィの手が優しく彼の後頭部をなでた。ジョナサンは泣き出していた。

【続く】

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