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ボクシングの美しさ

神楽坂には帝拳ジムがあり、プロボクサーの村田諒太さんとも何度かすれ違ったことがあります。

印象深かったのは、エレベーターのドアが1階で開いた目の前に、村田さんが立っていらっしゃった時のことです。

エレベーターの箱の中には、二十歳前後の痩せた外国人の男性二人と年配の女性が一緒に乗っていて、

「練習はどう? ちゃんと食べてる?」と気遣う女性に、モジモジしながら聞き取れないほどの小声でひとこと、ふたこと応えていました。帝拳ジムの練習生と関係者でしょう。

1階でエレベーターのドアが開き、村田さんと認識した二人はまるで別人のように目を輝かせ、うれしさのエネルギーが体全部の毛穴から噴き出しているようでした。

ーチャンピオンってこういうことなんだー

心が震えました。

『村田諒太 vs ゴロフキン 戦』

リングに現れた村田さんは、以前より小さくなった印象でした。ゴロフキンと比較するからそう見えたのかもしれません。しかし、表情も少し疲れたように私には見えました。

Round 1が終わり、コーナーに戻った村田さんからは笑みがこぼれ、以前の村田さんに戻った気がしました。2年以上試合から遠ざかっていた自分が、今、ここで目標にしていたゴロフキン相手に試合ができていることが、きっと信じられない気持ちもあったでしょう。そして、喜びも。

試合の中盤は、激しい打ち合いながらも、お互いの技と力を楽しんでいるようにも見えました。

Round 9を迎え、明らかに村田さんの脚が動かなくなり、パンチが出なくなり、ゴロフキンのパンチを受けて膝をつき、リングにタオルが投げ入れられました。

動けなくなった体を引きずりながら、それでもリングに立ち、戦い続けるチャンピオンの姿は、ボクシングの最も美しい姿だと感じました。

36歳の今、2年以上のブランクは肉体的にも精神的にも過酷なものだったに違いありません。解説席の元プロボクサーの長谷川穂積さん、山中慎介さんの目にも光るものが見えました。

ゴロフキンの試合後の村田さんに対するリスペクトと愛情を感じるまなざしと行動にも、ボクシングの険しい頂にいる人間の美しさを感じました。

さて、6月7日には井上尚弥vsドネア戦があります。楽しみです。

上り坂、絶好調の井上さんの試合は、人間はどこまで進化し磨き上げることできるのであろうかという希望を抱かせてくれます。躍動する肉体の美しさ、力強さ、スピードもボクシングの美しさであることには間違いありません。

そして、井上さんの30代後半の戦い方も、私は見たいのです。

ボクシングの美しさを教えていただいた村田諒太さんと井上尚弥さんの「幹」にひきつけられて気になるのです。

#ボクシング #村田諒太 #井上尚弥 #帝拳ジム #神楽坂 #美しいものについて