【セミナーレポート】クリエイティブの世界を変える画像生成AIの課題と対策
近年、生成AI技術の発展により高品質な画像生成が可能となる一方で、著作権や肖像権などの権利課題に対する理解や対応が求められるようになりました。
株式会社リワイアは、2024年4月23日に「生成AI画像の権利課題とその対策」と題したセミナーを開催しました。本セミナーでは、シティライツ法律事務所の前野弁護士をゲストに招き、生成AI画像に関する権利課題について、文化庁のガイドラインを交えながら解説していただきました。セミナー後半では、私が現状の画像生成AIと企業にできる対策について解説させていただきました。
本ブログでは、セミナーの後半で私が解説した内容を中心に、現状の画像生成AIと企業にできる対策について説明します。
画像生成AIがもたらすクリエイティブの革命
近年、画像生成AIの技術が急速に発展し、クリエイティブの世界に大きな影響を与えています。多くの企業が、この革新的な技術を活用し、印象的なビジュアルコンテンツを生み出しています。
例えば、オタ恋 広告では、画像生成AIを用いることで、コストを抑えつつ、短時間で大量のバリエーションを作成し、ABテストを実施することが可能になりました。その結果、より多くのユーザーを獲得することに成功しています。
また、Rakuten Fashion Week TOKYOでは、キービジュアルを国内で活動するモデル3名を起用し、全編画像生成AIで制作するという挑戦的な試みを行いました。これにより、これまでは現実では不可能だった表現を可能にし、ファッション業界における新たな創造性を切り開いています。
他にも、パルコの「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」や、お〜いお茶の新CMなど、様々な業界で画像生成AIを活用したクリエイティブが登場しています。
このように、画像生成AIは、クリエイティブの世界に新たな可能性をもたらし、多くの企業がこの技術を積極的に活用し始めています。AIによる画像生成は、コスト削減や制作時間の短縮だけでなく、これまでにない斬新な表現を可能にし、クリエイティブの領域を大きく広げています。今後も、より多くの企業が画像生成AIを取り入れ、革新的なビジュアルコンテンツを生み出していくことが期待されます。
画像生成AIの仕組みと代表的なサービス
画像生成AIは、主に2つの手法に分類されます。1つは「拡散モデル」、もう1つは「Transformerベースモデル」です。
拡散モデルは、ノイズを徐々に除去しながら画像を生成する手法で、Transformerベースモデルは、大量のテキストと画像のペアデータを用いて学習された言語モデルを基に画像を生成する手法です。
現在、代表的な画像生成AIサービスとして、以下の3つが広く知られています。
Midjourney
Stable Diffusion
DALL·E 3
これらのサービスは、それぞれ特徴があり、用途に応じて使い分けることができます。例えば、Stable Diffusionは、オープンソースで提供されているため、開発者が自由に活用できる点が特徴です。一方、DALL·E 3は、ChatGPTとの対話を通じて、より直感的に画像生成の指示を与えることができます。
現在の画像生成AIと著作権問題
画像生成AIの発展により、高品質な画像を簡単に生成できるようになった一方で、著作権をめぐる問題が浮上しています。AIが生成した画像が、学習データに含まれる既存の著作物の特徴を部分的に再現している可能性があるためです。それらが著作権侵害に当たるかどうかなどは現在文化庁が議論を行っている部分になります。文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回)
最近では、MidjourneyとStable Diffusionをめぐる事例が注目を集めています。
Midjourneyは、AIの学習に使用した16,000人のアーティストのリストを誤って公開してしまいました。このリストには、著名な現代アーティストや商業的に成功しているイラストレーター、さらには6歳の子どもが描いた絵画まで含まれていました。
一方、Stable Diffusionの学習データである「LAION-5B」には、児童性的虐待画像 (CSAM)が含まれていることが判明しました。該当するデータは削除されたものの、すでに公開されているStable Diffusionのバージョンにはその修正が反映されていない状態です。
さらに、Stable Diffusionのような画像生成AIでは、基盤モデルの上に第三者が独自で用意した学習データを追加学習させることで、オリジナルの画像生成AIを作成できます。また、そのオリジナルモデルにさらに追加データを加えることも可能です。
これらの過程を経て作成されたモデルは、誰でも簡単に利用できるようになっていますが、どのモデルがどの学習データを利用して作成されたものかは一切わからないのが現状です。
どのような学習データが含まれているかわからないにもかかわらず利用するというのは、現行の生成AIに関するガイドラインから判断しても、著作権侵害などの法的リスクが高いと言えます。
実際に既に海上保安庁が生成AIで作成したイラスト入りのパンフレットについて、著作権侵害の可能性が指摘され、配布を取りやめた事例や、ワコム米国支社が、新春セールの広告に利用したイラストが生成AIを利用しているのではないかと同社の主要顧客からの批判が相次いだ等の事例が発生しています。
画像生成AIを活用したい企業にできる対策
現在、多くの企業が画像生成AIの活用に注目していますが、著作権侵害などの法的リスクに対処するために、適切な対策を講じることが重要です。
現在、さまざまな企業が独自のアプローチで、画像生成AIの権利問題解決に取り組んでいます。ここでは、代表的な3つのサービスを比較しながら、企業にできる対策を探っていきます。
それぞれのサービスの特徴を比較してみると以下のようになっています。
各サービスごとに特徴があり、ニーズに合わせて適切にサービスを選択する必要があります。
著作権情報をトラッキングできる新しい画像生成AI「Generight」の紹介
株式会社リワイアが開発したGenerightは、画像生成AIにおける著作権や肖像権の問題に対応し、画像生成AI技術の健全な発展を促進するサービスです。
Generightの主な特徴は以下の4点です。
著作権が適切に管理された素材の利用
Generightは、権利がクリアされた素材のみをデータセットとして使用し、提供元への適切な対価の支払いを保証します。
データの利用権が追跡可能
独自の技術により、画像生成に使用されたデータやそのデータに紐づく利用権をトラッキングできます。これにより、ユーザーは安心して画像を利用できます。
自社IPをGenerightで活用可能
企業は自社のIPをデータとしてGenerightに提供することで、自社ブランドの特徴を反映した独自の画像生成AIを構築できます。
著作権保護された素材を用いた基本モデルの活用
イスラエルのスタートアップBRIA AIの画像生成AIを基本モデルとして活用しています。BRIA AIは、ストック素材提供会社と提携し、著作権保護された素材のみを用いてモデルを構築しています。
Generightは、これらの特徴を活かし、権利者の利益を守りながら、画像生成AI技術の健全な発展と、AI生成物の適切な利活用を促進します。
さらに、Generightでは、ユーザーのニーズに合わせた2つのサービスプランを用意しています。
スタンダードプラン
任意のシチュエーションを指定して、そのシチュエーションに最適化された画像を生成するプラン。最低契約期間なしでお気軽にお試しいただけます。
アドバンスドプラン
自社ブランドのデータセットを活用してオリジナルの画像生成AIを作成するプラン。
画像生成AIの著作権問題が大きな課題となる中、Generightは、権利処理の適正化と透明性の確保により、企業がより安全かつ効果的に画像生成AIを活用できる環境を提供します。
まとめ
本ブログでは、2023年8月24日に開催された「クリエイティブの世界を変える画像生成AIの課題と対策」セミナーの内容を解説しました。
画像生成AIは、高品質な画像を生成できますが、学習データに含まれる著作物の権利処理やデータの内容精査が不十分な場合、知らずに著作権や肖像権を侵害してしまうリスクがあります。
こうした課題に対処するため、企業はAdobe Firefly、Bria.ai、Generightなどのサービスを活用することで、権利がクリアされた素材のみを使用した画像生成AIを利用できます。
特に、株式会社リワイアが開発したGenerightは、データの利用権トラッキング機能を備えており、企業が安心して画像生成AIを活用できる環境を提供しています。
画像生成AI技術は、クリエイティブの可能性を大きく広げる一方で、著作権などの法的課題への対応が不可欠です。企業は、Generightのようなソリューションを活用しながら、適切にリスクを管理し、画像生成AIの効果的な活用方法を模索していく必要があります。
Generightについてより詳しく知りたい方は、公式ウェブサイトをぜひご覧ください。
また、弊社ではこれからも生成AIに関する情報を発信し続けますので、Xアカウント(@feed_yao)のフォローもよろしくお願いいたします。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?