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第十三章 ホンマもんは、美女の匂いを嗅ぎながらティッシュ片手に米二合を喰らう

兵隊の一員となった私。
心の自分が慟哭していました。
しかし、あくまでこの状況を楽しんでいるかのように振る舞わないといけません
(※慟哭とは声を出して激しく泣くこと)

ハイパーVIP来店イベントの警戒レベルは西日本豪雨以上。

"命を守るための最善の行動をとってください"と私の脳は全神経へと通達。

"今すぐに武器を持ち、戦いの準備をして下さい。目の前の戦いから逃げないで"と社畜メンタルは真反対の反応を示しました。

神経vsメンタル。

私が清潔健やかな生活を営む為に活動する両翼が激しくぶつかります。
(※実際は私の神経もメンタルもゴミなので、食べこぼしが以上に多いし、緊張しすぎて阪急梅田駅構内で嘔吐します)

葛藤と言うべきにふさわしいこの戦い。
この相反する2つの欲求・感情が激しくもつれ合い、私の中で主導権を奪い合います。

数分後戦いは終わった頃、山ほど積まれていた灰皿洗い物は綺麗に片付いていました。
私はそっとビールケースに腰掛け、先端があらゆる角度に曲がったハイライトに火をつけました。

ぼーっとヤニまみれの天井を見ながら煙を吐き出します。
タバコの火がまだ半分しか灰になっていないのに、もうお腹いっぱいになり火を消しました。

私は大きく深呼吸し、大量の乾しぼをビールケースに詰めました。
「今からは戦いや。命を守る為の最善の行動なんかいらんねん。クソ神経死ね」
と自分の神経に語りかけながら。

(※乾しぼとは乾いたおしぼりのこと。一気飲みの時にシェルターとして使用する水商売では必需品)

「ちょ、迎えに行ってくるから。お前ら準備して待っといて」
Hさん達はハイパーVIP金ばらまき自動機械Aさんを迎えに行きました。

Rさんも一緒に迎えに行きました。
ロングの髪をさぁっとなびかせながら背筋に木刀をさしたような綺麗な姿勢で私の前を通り過ぎて行きました。
まるでスローモーションのように感じました。
髪一本一本が独立し、それぞれが彼女の髪として、体の一部としてしっかりと活動していました。

彼女が私の目の前を通り過ぎて1秒後
彼女に目を奪われていた私にとっては15分から20分に感じていました。
遅れてやってきたのは、髪の毛の香り
もう、この香りを瓶詰めにして持って帰ってティッシュ片手に米2合食えます。

巌流島で佐々木小次郎にボッコボコにされた後、遅れてやってきた宮本武蔵にも木刀でめった撃ちにされた感じ。
もうなんとも言えない満足感で心がいっぱいでした。

もうこのまま勤務終了して帰りたい。

それは決して叶わぬ願いだと知りながらも、私は根っからの社畜なので、ただただ"来店"という死刑を待つばかりでした。

処刑の時計は刻々と針を進め、もうそこまで"執行者"の足音が聞こえてきてました。

続、、、、

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