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第十一章 戦場に流れた若者の死は報われた試しがない

ひたひたに注がれたストロングゼロを置かれたクソガキを横目に始まったのは間奏一気という非人道的ゲーム。畜生が行うゲーム。
(※ルールは簡単。カラオケで間奏前に歌った人が一気飲みするだけ。ばか。殺人。うんこ)

浜崎あゆみのユーロビートを入れたHさん。
「一番若手からいこや」の提案で、クソガキからのスタート。
しかしこのユーロビートに仕掛けられた巧みな罠。
一番手がいきなり間奏を迎えるんです。

「はめられたなぁ笑笑」とストロング一気するクソガキ。
アルコール地獄行きの片道切符を手に取った瞬間でした。

そこからたけのこたけのこにょっきっきあっち向いてホイなどの反社会的で破廉恥、酒への冒涜と言わんばかりのゲームが続きました。

トイレといって立ち上がったクソガキ。
席からトイレまでの時空が意図的に歪められた、もしくは三半規管の中におしっこを混入されたと言わんばかりのフラフラ。
やっとトイレに入りました。

「あいつべろべろやけど、まだいけるなぁ」
社長がHさんに語りかけます。
「あともうちょいっすね。いったりますわ」
Hさんはまた口だけ笑って答えました。

いったいこの2人はこれまでの人生で何を学んだのか。
傷だらけの子犬にロケット花火と爆竹で攻撃し続ける彼ら。

清潔健やか花王のように明るい人生しか送ってきたことがないので、この状況を受け入れることができませんでした。
(※実際は、くよくよだらだらジミジミと、しつこくみっともなく、生き続ける汚い大学生なので、クソガキがストロングゼロを飲まされる度に膀胱が少し開くくらい笑っている)

トイレから一切出てこないクソガキ。
平成の浅間山荘と言わんばかりの立てこもり
何度ノックしても返信はありません。

Hさんの突入の指示を受け、鬼の二機と生まれ変わった私はトイレ内に突入。
そこには、ボロボロになり便器に頭をホールインワンしたクソガキが。

「聞こえますか?無事ですか?」
人質か犯人かわからないクソガキに語りかける私。
返事はないので、被疑者死亡で書類送検だなと思いました。

ところがHさんの彼女が「さ、一緒に飲も??」と耳元でささやいたところ、これまでと打って変わり復活したクソガキ
クソガキには天使からの囁きに思えたようです。

フラフラの足で席に着くクソガキ
心身共に衰弱し、これ以上の戦闘は不可能かと思われます。

これまでのヒヤリハット事例から、私は今後起こりうる災害に対応するため、バケツ大量のおしぼりを手に席につきます。

しばしの沈黙。
嵐の前の静けさ。
突然体をうねらすクソガキ。
急いでバケツを差し出す私。

今夜の憎しみ、悲しみ、悔い、すべてを吐き出すクソガキ。
オトナからの洗礼は思っていた以上に重く、苦しい。

(※私はこれまでのKY活動の成果が、今回のバケツ差し出し案件に繋がったと心底喜んでいました。)

タクシーにクソガキを運び、積み込み完了。
「ありがとうございました」
最後の最後に彼の口から出た一言。心の底から滲み出た言葉。
私は彼を勘違いしていたのかもしれません。

田舎からたった1人で大阪へ、慣れない環境で懸命に生きようとした彼と自分の姿が重なり目頭が熱くなりました。
(※実際の私は大阪の没落した家系で育ったドブネズミのような真逆の人間)

顔は青白く、火の国熊本出身の少年は酒という液体で鎮火されました。

クソガキ帰宅後も続く、宴会。
気がつけば6時半
一限から学校なので、やけに硬いタイムカードを切り退社。

外は明るかったですが、私の心はいつもより暗い。
大人の階段を登ったクソガキ
その洗礼はあまりにも酷すぎた。

若い芽をナパーム弾で焼き払うかのように。
出た杭をユンボではつるように。

これが大人のやり方

火をつけたハイライトはいつもよりラムの香りが強く感じ、すぐに消しました。

やけに重い足取りで南海電車へと足を向けました。
(※南海電車は、赤井英和が不良時代に一両目から順番に足組んでるヤンキーの足を蹴っていくというエピソードがあるので、育ちのいい私は関西私鉄の中で一番乗りたくない電車)

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