第十章 女子高生は彼の頭を当たり前のように拳銃で吹き飛ばす
怒りに震える手で酒を注ぐ私。
刈り上げの社長。
死んだ目のクソガキ。
それを草木に隠れて獲物の頸動脈をじっと狙うHさん。
北新地〜Hと僕と時々クソガキ〜といったドキュメンタリーが始まりました。
クソガキは火の国熊本出身、就職のため大阪に出てきたと聞きました。
社長曰く若手一番の期待株。次世代はこのクソガキに懸かっていると言っても過言ではないとのこと。
「酒で潰れたことないっす自分」
彼のこの言葉を聞き、義務教育を満足に受講していないとすぐに分かりました。
最終学歴は幼稚園か少年院といったところでしょうか。
高貴な育ちで頭の良い私はすぐ吐き気を催しました。
(※実際の私は没落した家系の長男で道徳と倫理の成績が異常に悪い赤ちゃん)
2本目のチューハイを飲んだところでクソガキはトイレに。
それを見計らうように社長がHさんに
「あいつ酒で殺してくれ」と耳打ち。
どうやら一度酒の怖さを教えてあげたいようでした。
Hさんは「任せてください」と口元だけニヤリと笑いました。
若者に人生を説く聖職者とも、命を奪う悪魔ともとれる何とも不思議で不気味な笑みに、私は一瞬ぞくっとしましたが、心のどこかでこの行末を見届けたいという好奇心もありました。
「おい、ストロングもってこい」
Hさんの指示に従い、冷蔵庫の奥底に眠っていたストロングゼロに手をかけました。
私の心を見透かしているかのように冷たい。
水滴が、私の涙です、
現在ではストロングゼロの破壊力は周知の事実ですが、当時はまだそこまで認知されていなかったので、私は「ストロング?ただのチューハイやんけ。テキーラでさっさと首元掻っ切れ」と思っていました。
(※後々に私はストロングゼロで40歳までに歩けなくなると診断され、断酒することになります)
売り上げに困った不動産屋より"話が早い"ストロングゼロ。
テキーラはあからさまな殺人酒。死神が大鎌を持ち、ミナミで闊歩するようなもんです。
それに対してストロングゼロの見た目は女子高生。セミロングの髪とスカートをなびかせ、つぶらな瞳をこちらに向けながら近づいてきます。
やっと手が届くといった距離に来た途端、パンツの中から拳銃を取り出して、こちらの頭を粉々に吹き飛ばします。
トイレから戻ったクソガキは席について一言
「まだチューハイ笑 いくら飲んでも酔いませんよー」
死亡フラグをそのへんに突き刺していくバカ。
「あ、氷いりませんよ笑」
と続きました。
自分から殺人女子高生の方に走り込み、その子の手を掴み銃口を己の口に突っ込みながら、もぐもぐする愚行。
ストロングゼロは、日付変更線より確実に彼の中の時計を粉々に破壊し、混沌の闇にずるずると引き込んで行くのです。
続--
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