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J-POPにおける母音反復の分析と記法

(加筆中)

くりかえすことは音楽の基本原理である。

歌詞もまた音楽の一要素なので、ある程度においてくりかえす現象が見られます。

この記事ではとりわけ母音のくりかえしに注目し、J-POPの歌詞を構造分析するためのアイディアを提案します。

J-POPにおける母音のくりかえしとは何か

まず先に母音のくりかえしの例を挙げます。米津玄師「Lemon」とaiko「ハニーメモリー」を取り上げます。

ex.1
ゆめならば どれほどよ/かったしょう
(米津玄師「Lemon」)
https://www.youtube.com/watch?v=SX_ViT4Ra7k

解説
[前半]ア母音が3回くりかえし、オ母音が3回くりかえす
[後半]ア母音が2回くりかえし、オ母音が2回くりかえす

このように見ると、歌詞に一定の構造があることが理解できると思います。間に別の母音を挟まずに同じ母音が立て続けにくりかえす。これを母音の連続と呼びます。
別のくりかえしの例を挙げます。

ex.2a
きみいと いん
(aiko「ハニーメモリー」)
https://www.youtube.com/watch?v=QkEyfqFY3TE

解説
[前半]ア母音が1拍置きに2回くりかえす
[後半]ア母音が1拍置きに3回くりかえし、2拍置いてもう1回くりかえす

間に別の母音を挟みながら、短時間で同じ母音がくりかえし出てくる。これを母音の反復と呼びます。
さらにイ母音に注目すると、もうひとつの母音の反復が見えてきます。

ex.2b
きみと あんだ
(同上)

解説
[前半]イ母音が2回くりかえし、1拍置きに2回くりかえす
[後半]イ母音が1拍置きに3回くりかえす

つまり、イ母音とア母音とが短時間で交互にくりかえし出てくる構造があります。しかし、なぜくりかえすのか? くりかえすことの効果は何なのか? そもそもくりかえしているわけではなく、たまたまそう見えただけではないのか? という疑問が湧きおこるかもしれません。わかります。しかしそういった答えるのに難しい疑問は傍に置いておき、次の項目に進みたいと思います。まずは目の前に起きている現象をよく観察しましょう。

母音のくりかえしの分類

母音のくりかえしは、次の3つに分類することができます。

1. 隣りあった(母音の連続)→上記のex.1に対応
2. 少し離れた(母音の反復)→上記のex.2a、ex.2bに対応
3. 離れた(母音の回帰反復
この記事では1と2に絞って取りあつかいますが、除外した3の「母音の回帰反復」についても例を挙げておきます。

回帰反復は沼野雄司さんの『ファンダメンタルな楽曲分析入門』に出てくる用語です。歌詞ではなく、西洋音楽の楽式を説明するための用語ですが、わかりやすく本書をまとめているyasomiさんのブログ記事から引用します。

本書によれば、音楽を特徴づける大きな要素として「反復」を挙げることができる。「反復」されるものはリズムであったり旋律やコードであったりと様々だが、大別すると、直前のパターンが直ちに再現される「繰り返し反復」と、いちど別のパターンを経由したのちに同じパターンへと戻ってくる「回帰反復」の2種類があるという。
後者がクラシック音楽でいう「3部形式」に相当するのだが、この「回帰反復」というスタイルは他の芸術ではめったに現れない、音楽独自の形式らしい。
https://yasomi.hatenablog.com/entry/fundamental-music-analysis

母音の回帰反復とは何か

上記の1, 2と違うのは、回帰反復はすぐにくりかえさずに一定の時間を置いてからくりかえす点です。瑛人「香水」とフジファブリック「若者のすべて」を例に説明します。

ex.3
A きみのどるちぇあん がっばー
B そのこうすい せい
(瑛人「香水」)
https://www.youtube.com/watch?v=9MjAJSoaoSo

解説
[前半]
A「きみ」→B「そ」:オ母音のくりかえし
A「るちぇあん」→B「うすい」:オ母音のくりかえし
[後半]
A「がっばー」→B「せい」:ア母音/オ母音のくりかえし

このA→Bの関係のように、一定の時間を置いて同じ音が反復する現象を回帰反復と呼びます。ラップの脚韻も回帰反復の一種です。

ex.4
A ごの なびに ことしも った
B かな いよな きっとね いいよ
(フジファブリック「若者のすべて」)
https://www.youtube.com/watch?v=IPBXepn5jTA

解説
[前半]A「ごの」→B「かな」:ア母音/オ母音のくりかえし
[後半]A「った」→B「いいよ」:ア母音のくりかえし

母音の反復

(後日加筆)

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