見出し画像

障害のある息子くんと、そのきょうだいの距離感。

息子のいない週末
息子がショートステイに行った週末、私は気が抜けたようにぼんやりしています。
英語の勉強も手につかないし、映画もドラマも見る気がしないのです。ひたすらぼんやりした無駄な時間を過ごしています。何もしないこんな時間は、心底リラックスた贅沢な時間なのです。

そこへ会社勤めの娘から、これから帰宅すると連絡がきました。ここで私のスイッチがオンになりました。娘の布団を干し、冷蔵庫を確認し、買い物に出かけました。 

障害者とそのきょうだい
健常者の娘と知的障害のある息子とのきょうだい関係は、少し複雑です。夫が亡くなった時、娘は小学6年生でした。お父さんっ子の娘のショックは相当なものでした。そこへ

「これから、〇〇(息子)をどうやって育てていけばいいのー!!」

と悲痛な叫びをあげたのはでした。私はギョッとなり固まりました。息子の存在が、娘にここまでプレッシャーをかけていたとは思いませんでした。
その後、娘は鬱状態になり学校へ行けなくなりました。なんとか卒業式には出席しましたが、娘と私と私のことを心配した友人と3人で出かけました。

このような出来事があったので、「夫のやらかしたことは、娘には言うな。墓場まで持って行け。」と精神科医から注意を受けていました。
その流れで、周囲から子どものそばにいるようにと意見され、仕事を辞め家に入ることになったのです。

私の中で、多額の借金や諸々の問題を残して亡くなった夫への怒りは、なかなか鎮まることはありませんでした。思い出話を話すと恨み言になりそうで、夫の話をしないようにしていました。
事情を知らない娘からしたら「亡き父に冷たい、鬼母」と思っていたようです。お互いに口には出さないけど、複雑な感情を持っていました。
だからこそ第3者であるスクールカウンセラーに話を聞いてもらうべきだと背中を押し、娘は中高大とカウンセリングを受け続けてきました。

娘に伝えたこと
娘には自由に生きていいので、どのような仕事についてもいいし、国内、海外での就職もすればいいと話していました。息子のことは制度を利用し、私なきあとの準備は、最大限できる限りのことをすると約束しました。

だから息子の進路開拓に努力し、支援相談員、事業所のスタッフと密に連絡を取り、我が家の方針を伝え続けました。もちろん制度理解を含めて勉強もしました。

そして娘には、なけなしのヘソクリを投資し、海外の語学研修にも行かせました。もちろん進学、就職に関しての勉強もしました。オープンキャンパスにも足を運び、業界の解説本や経済雑誌を読みました。

娘の転機
娘はなんとか大学に入学し、いろいろとアルバイトをしていました。その中でたまたま条件があったのが、障害児の放課後ディサービスのスタッフの仕事でした。
たまに息子の支援学校に仕事で出向いたり、いろいろな障害のお子さんや保護者の方たちに出会いました。突然、噛まれたり、髪を引っ張られたり、痛い目にもあいました。そこでいろいろな気づきがあったようです。

「まだまだ〇〇(息子)はやり易い部類やね。」

そんなことを言うようになりました。息子との小競り合いは、相変わらずありましたが、少しずつ絶妙な距離感を保つようになりました。
だからこそ出来るだけ家族で行動することはやめるようにしました。「私と息子」「私と娘」それぞれの時間を持つようにしました。ゆえに私は2倍忙しくなりました。

コロナ禍の就職
娘の入社はコロナの年度でした。なんとか引っ越し荷物を運び込みましたが、新入社員研修もリモートでした。会社から県外から出ることを許されず、感染者の多い大阪府からの来訪も規制されていました。新しい生活と仕事、息の詰まるようなコロナ禍での新社会人は、鬱々と病んでいました。

数ヶ月後、やっとのことで娘の部屋を訪れると、ゴミの山で床が見えない状態でした。言葉を無くしました。仕事に疲れて、このような部屋に戻ってきても、気持ちが休まるわけはありません。荒れた部屋は娘の心情のように感じたので、このクソっ!絶対にピカピカにしていやると磨き続けました。娘に指示を出しながら、黙々と6時間近く部屋を片付け掃除しました。

それから息子がショートステイせ不在の時に、娘のところを訪問するようにしました。コロナが落ち着き、会社の生活にも慣れてくるころには、部屋もそれなりに落ち着いてきました。

娘の帰省
息子の不在時に、ときどき娘が帰ってくるようになりました。帰宅しても何をするわけもなくゴロゴロ寝ては喋り、おやつを食べては喋ります。私は一宿一飯の恩義を発令し、トイレか風呂の掃除をしてもらうようにしています。それだけでも充分、有難いです。

最近、学生時代の趣味を復活したそうで、とても楽しそうです。本も読めるようになったようで、図書館にも出向いているようです。仕事は相変わらずハードですが、海外出張にならない限りは、それなりに平穏なようです。やれやれです。

息子がショートステイから帰宅するまでの、あと数時間、
娘には存分にゴロゴロしてもらいましょう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?