『群馬怪談 怨ノ城』戸神重明 編

再び怪談本。しかも同じ作家さんの出版本だ。「どんだけ戸神先生好きなんや」というツッコミが聞こえてきそうだが、大好きなんだもの、仕方ないじゃん。

本書は、編著者の戸神重明氏ら6名の執筆陣による群馬県内で、発生した怪異をまとめたものである。

構成的に、各話がそれぞれ歴史的な事象を交えた形での読み物となっており、縄文時代に因む話から、著者らの記憶に比較的新しい昭和時代の話まで、かなり幅広く網羅されていて、読んでいる方も、なかなか楽しい。

しかも、巻頭には群馬県の地図や地域の歴史を簡潔にまとめた年表なんかあり、ご当地の歴史・地理にちょっぴり詳しくなれるのも嬉しい。

南北朝時代の新田氏に関しては、新潟県にも関係しているが、ご当地は新田氏の拠点。当然、新田氏絡みの怪談もあるのが、親近感が持てて、小気味よい。

また、本文にでてくる「忘却遺産」というワードも、とてもユニークな発想で、記憶に残った。

『歴史』と『怪談』って、別ジャンルに捉えられることも多いのだが、こういう風に関連付けて企画してくれるのは、普段から歴史をやっているものからしたら嬉しいし、参考になる。

あんまりおおっぴらにはできないものになるかもしれないが、場所が確実にわかっているところをいくつかピックアップし、それらを回るツアーを企画したらどうだろう。そうすれば、それがそのまま観光としてのコンテンツにもなりえる。もちろん、あくまで「裏メニュー」としてだけれども。

怪談も充分、〈観光資源〉として成立し得る。

そんな可能性があることを、想起させた一冊だった。

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