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丸アイコンつき吹き出しインタビュー記事を書いて、「勘弁してくれ」と思った話

先日、はじめて吹き出しつきのインタビュー記事案件を受けました。
こんな感じの奴です。

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このスタイルのインタビュー記事を2本書いたのですが、「ちょっと勘弁して」という経験をしたので晒します。

インタビュイーは男女二人組の建築家ユニットです。

少し長いのですが、問題となる部分を転載しますね。

▼(転載開始)▼

●土地の個性と住み手の個性を出会わせる

Q:住宅設計で大切にしていることはなんでしょうか?
男:オーナーさんが探してきた土地の個性とオーナーさん一家の個性をどう出会わせるかを僕らなりに考えることを一番大切にしています。
お会いしてすぐに仕事を始めるのではなく、まず話したい。「どういう風に暮らしたいか」をきちんと訊くことが、私たちにとって大きな指針になると思うんですね。ですから広さの希望は一番最後に訊く。最初に聞いちゃうと、つまんなくなっちゃうような気がして訊けない(笑)
女:今回『●●●●●●●●』(●●●●●●・刊)という本を出すことになりましたが、1章目を「住まいの個性を引き出す」にしました。土地にも住み手の個性が反映してくるものなんです。
Q: 土地に個性が反映ですか?
男:ここは南側が道路に、北側が公園に面した土地の一角です。オーナーさんはこの土地を見た時に南側ではなく、わざわざ北側を買ったんですね。
要するに住環境に向き合ったとき、日当たりより公園の眺めを大切にして暮らしたいと。すごく個性的ですよね。
しかも公園からカエデの枝が伸びて敷地を越境していたんです。普通だったら、枝払いしてから建てます。でもそうじゃなかった。この家が五角形になったのは、このカエデにもっとこっちへ伸びてきて欲しいからなんです。家がここでしか生まれ得ない形になっているんです。

▲(転載終了)▲

このセクションでは一貫して「土地の個性とオーナーさんの個性」について書いています。少なくとも自分ではそのつもりです。

しかし担当した編集者にこう言われました。

なぜ突然本の話が出てくるんですか? 話の方向性が何の前触れもなく変わってしまっているじゃないですか?

女:今回『●●●●●●●●』(●●●●●●・刊)という本を出すことになりましたが、1章目を「住まいの個性を引き出す」にしました。土地にも住み手の個性が反映してくるものなんです。

の部分が問題とされたわけです。

「土地の個性」の問題は大切なので、近刊のなかでも序盤でその話をしています、という話であって突然本の宣伝を始めたわけではありません。

この編集者は「今回『●●●●●●●●』(●●●●●●・刊)という本を出すことになりましたが」という部分をみて、話題が変わったと判断したようなのです。

このセリフの前半と後半を入れ替えてみましょう。

女:土地にも住み手の個性が反映してくるものなんです。「住まいの個性を引き出す」という話を、今度出る『●●●●●●●●』(●●●●●●・刊)という本の1章目でもしているくらいです。

こうすると本の話をしているわけではなく、【あくまでも「土地の個性」の話をしていて、それを本の序盤にも書いたんです】と言っていることがはっきりすると思います。

担当編集者の要求は、問題の本のセリフの直前にQ(スタッフ)のセリフを入れて「本の話題に変わりましたよ」とナビゲーションするように修正しろ、というものでした。

僕がした修正を施さずに、先方が行った通りにするとこうなります。

●土地の個性と住み手の個性を出会わせる

Q:住宅設計で大切にしていることはなんでしょうか?
男:オーナーさんが探してきた土地の個性とオーナーさん一家の個性をどう出会わせるかを僕らなりに考えることを一番大切にしています。
お会いしてすぐに仕事を始めるのではなく、まず話したい。「どういう風に暮らしたいか」をきちんと訊くことが、私たちにとって大きな指針になると思うんですね。ですから広さの希望は一番最後に訊く。最初に聞いちゃうと、つまんなくなっちゃうような気がして訊けない(笑)
Q:今度『●●●●●●●●』(●●●●●●・刊)という本を出すそうですね?
女:そうなんです。1章目を「住まいの個性を引き出す」にしました。土地にも住み手の個性が反映してくるものなんです。
Q: 土地に個性が反映ですか?
男:ここは南側が道路に、北側が公園に面した土地の一角です。オーナーさんはこの土地を見た時に南側ではなく、わざわざ北側を買ったんですね。
要するに住環境に向き合ったとき、日当たりより公園の眺めを大切にして暮らしたいと。すごく個性的ですよね。
しかも公園からカエデの枝が伸びて敷地を越境していたんです。普通だったら、枝払いしてから建てます。でもそうじゃなかった。この家が五角形になったのは、このカエデにもっとこっちへ伸びてきて欲しいからなんです。家がここでしか生まれ得ない形になっているんです。

確かにこうしても綺麗に流れます(本に関する質問がやや唐突に感じはしますが)。そしてWeb上はこういうインタビュー記事で溢れかえっています

読者は頻繁に話題が切り替わる記事でないと読めなくなっているのでしょう。そして編集者もそういう読み方しか出来なくなっているのだと痛感させられました。

ワンセクションを一つの話題で語り切ることさえ許されないご時世。本当に勘弁して欲しいです。

でも「ライター初心者へ。上手な文章の書き方教えます」的な場所では、今回の編集者のようなやり方をお手本として広めているわけですよね?

この影響は間違いなく書籍にも及んでくるでしょう。Webの負の遺産です。

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