「中年の危機」から逃れるため所謂「文壇」と呼ばれる所に入ることにした
だいぶ前(正確には9月上旬)に内定の電話を貰ってはいたけれど、今日ポストを開けたら正式な書類が届いていた。
公益社団法人 日本文藝家協会の会員になったのだ。
間違えていたら正しいことを教えて欲しいのだけれど、ここがいわゆる「文壇」と言われる場所になるのだと思う。
会長は林真理子。ほかにも村上 龍とか島田雅彦、保坂和志、小池真理子、本谷有希子、朝井リョウ、万城目 学、町田 康、夢枕 獏……(順不同)など有名作家が名簿に名を連ねているのだから、ここが全てではないにしても、たぶんきっと文壇なのだろう。
入るのに2年も迷った理由
「すごいじゃん!」と言われそうだが、入るべきか2年くらい迷っていた。
なにが問題だったかというと
・「職能団体」を謳ってはいるものの、実際は自費出版の本しか出していない会員が半数近くいる。
→全然職能団体じゃないじゃん
・ノンフィクション系の書き手が少ない
→設立当初は小説家と劇作家の団体だったので、これは分かる
・「文芸的な作品」を書いていることを入会条件にしているはずだが、僕の目から見て到底「文芸的」とは言えないものを書いている知人が入会しており、違和感を感じた
「じゃあ、なんで入ることにしたの?」という話になるわけだが、
・ここ2年くらい「中年の危機」状態にあるので、いままでの自分だったらやらないことをやろうと思った。
・以前取材していた「ライター・イン・レジデンス」のような主題は、アーチストか小説家でないと理解できない。一般のライターに話を振っても「しらー」となるだけ。そっち方面のチャンネルが必要。
・2018年に出した著作『白い孤影』で「書きたいものを書く」という点に関しては、やりきった感がある。ビートたけしが「座頭市」とか「アウトレイジ」を撮ったように、「たまには売れ線路線の物を書いても良いかな」という気になったが、そのままふつうの商業ライターになるのは嫌だ。
・北海道に行って狐や鹿を見て以来、やたらと野生動物を目にする機会が増えた。この手の「目に見えない繋がりの駆動」みたいなものへの期待
という辺りが理由だ。
入会するとどんなメリットがあるの?
「入会するとどういうメリットがあるの?」と色々な人に訊かれたが、僕はここを社交クラブの一種だと理解している。
あくまでも社交の場だから、実利的なメリットはない。
ライオンズクラブやロータリークラブと一緒だ。
厳密に言えば著作権の管理とか、何かあったとき声明を出すとか、保険に入れるとか(国保の方がずっと安いが)、無縁仏になりそうな作家のお墓の世話(!)とか、実務的な役割もある訳だけど、基本は社交クラブだと思う。
フリーメイソンもじつは社交とボランティアの団体でしかなくて、入会後に実態を知ってやめていく人が多いそうだが、文藝家協会も看板の大きさの割に中身はそれほどではないのではないか。
ここに入らずに無頼とか孤高を貫く方がカッコ良いんだろうけど、「『中年の危機』気味なので今までの自分だったらやらなそうなことをやってみた」というのは、小さくない理由だ。
「中年の危機」を乗り越えるというのは欧米では結構関心を持たれているテーマらしく、周防正行監督の映画『Shall we ダンス?』も、アメリカでは「中年の危機を乗り越えようとする男の物語」 だと解釈されたのだそうだ。
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」などの巡礼路を歩いてみたり「死ぬまでにやりたい100のこと」みたいなリストをつくって、まめにクリアしていく人も多いらしい。
リストの中には、すごくくだらない項目が入るのがお約束だ。
(たとえば飛んでいる飛行機の中でセックスする、とか)
あるいはポルシェとかハーレーダヴッドソンを乗り回すとか、愛人を囲ってみるとか、バンジージャンプやスカイダイビングに挑戦するという人もいるかもしれない。
僕の場合は高級車を買うほどのお金はないし、結婚していないので愛人はつくれないし、スカイダイビングは大学時代に挑戦してしまったので、再挑戦しても以前ほどのわくわく感は期待できない。
そういう訳で、自分には縁のなかった社交クラブ的な世界に入ろうと思ったというわけだ。
こんな動機で文藝家協会に入る人は珍しいかもしれない。
なにはともあれ、もし犯罪を起こして新聞に載るようなことがあっても、今後は「自称ライター」ではなく、きちんと「作家・文筆家」として報道される(はずだ)。
今後もよろしくお願いします。
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