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「ヨコハマメリー学」への誘(いざな)い

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2018年12月12日発売の『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)をより深く読み解く上でのヒントをまとめてみました。 宮崎駿の映画『風の谷のナウシカ』を論じた『ナウシカ論』… もっと読む
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2019年9月の記事一覧

メリーさんは「本当は」なぜ立ちつづけていたのか、に関する考察

白いドレスを着たいわゆる「ヨコハマメリー」に関する考察です。  (しばらくの間、無料公開とします)  拙著『白い孤影 ヨコハマメリー』のなかで提示しているとおり、彼女の運命の相手である「米軍将校」はハマっ子の空想の産物だったと思います。  そもそも「アメリカの将校を待ちつづけている」という噂を彼女から直接聞いた人間はいませんし、確認した人間もいません。彼女が「将校を待ちつづけていた」と言われたのは、西洋かぶれしたドレスを着ていつも人待ち(客待ち)していたからでしょう。外

ヨコハマメリーは文豪・谷崎潤一郎の「作品」だった!?

【期間限定無料公開中】  以下、『昭和の謎 99』 2019年初夏の号(ミリオン出版 )に寄稿した記事を転載したものです(新事実の発見により、一部の箇所を修正しています)。 従来のヨコハマメリー像からは導き出されないような予想外の内容ですが、皆様どうお考えになりますか?  皆様の御意見をお待ちしております。  なお無断転載や出典元を省略した引用は、著作権法で禁じられていますのでご留意下さい。  *2020年9月9日 タイトルを変更しました。元タイトルは「ヨコハマメリーと文豪

アカデミズムの世界からみた「ヨコハマメリー=アウトサイダー・アーチスト説」

『白い孤影』で提示した「メリーさんアウトサイダー・アーチスト説」。 答えこそ出ないであろうものの、議論を戦わせる上で楽しいテーマだと思うのですが、読者からの反応ゼロ。 拙著の読者層と本のミスマッチが、埋めがたく露呈する結果となりました。 *アウトサイダーアートに関しては、アウトサイダー・キュレーターの櫛野展正さんのnoteを見ると分かりやすいと思います。https://note.mu/kushiterra このままスルーされてしまうと、拙著は単なる消費財として消えてしまい

メリーさんの白塗りに関する補足的な考察

彼女の白塗りを「謎」という人たちがいますが、あれは謎と言うより世代間ギャップではないかという気がします。 自然美を目指す近代美容は、白塗りメイクではなく「素肌を活かすメイクこそが美しい」としています。しかし近代以前の世界では、素肌を隠すメイクの方がむしろ一般的でした。 近代以前の女性はコルセットで腰をきつく締めたり、「バッスルドレス」のようにフレームを入れてスカートを膨らませるなど、服もメイクも不自然でした。 この傾向は日本も同様で、白粉、お歯黒などの風習がありました。

横浜の街から失われた港情緒が、メリー伝説に与えた影響

拙著『白い孤影』の終盤で書いたように、彼女のイメージはなんども変遷しています。 そのひとつはいまでこそ「終戦後のパンパン」の生き残りのように語られる彼女ですが、80年代当初は「ミナトのマリー」と呼称された、ということです。つまり米兵ではなく、マドロス(外国人船員)相手の女だと捉えられており、文字通り「ミナトの女の伝説を生きる最後の一人だった」とイメージされていたのです。 〈六十代とおぼしきそのおばさんは、白いロングドレスに白いストッキング、おしろいで顔も真白で、全身これ白

メリーさんに瓜二つのハリウッド女優…ほんとうに偶然なのか?

メリーさんのお姫様ドレスと白塗りは、彼女のトレードマークであり、エキセントリックさの象徴でもあります。しかし白塗りで有名なエリザベス一世の件もあります。こういう人は案外珍しくないのかもしれません。 だからという訳ではないのでしょうけれど、とあるハリウッド映画に、メリーさんそっくりなキャラクターが登場しているのです! それは1962年に制作された『何がジェーンに起ったか?(原題:What Ever Happened to Baby Jane?)』という作品です。 天才の誉