山陰家族旅行(2022年12月19日~21日)
はじめに
「おおっ、これは・・!」
言葉を失う。
松葉ガニの刺身をいっぽんつまみあげ、口を上向きに開けて刺身を下から咥えた瞬間、上品な甘みと柔らかい感触が口いっぱいにひろがった。
これが、嫁さんの言っていた「美味しいカニ」なのか!
会席料理は、さらに「かにしゃぶしゃぶ」「かにの奉書蒸し」と続いていく。
至福のときを味わった。
ここは「界玉造」の夕食会場。
はじまり
嫁さんの「死ぬまでに一度、美味しいカニを食べておきたい」の一言で山陰カニツアーが決まった。季節は冬。カニは松葉ガニ。
目的地は鳥取となった。
旅行準備
カニを食べる宿は「界玉造」。
楽しみは後回しということで2泊目の宿とした。
何か周遊パスがありそうだと調べると、「出雲・松江ぐるりんパスミニ」がある。岡山→米子の特急「やくも」指定席乗車券を「WEB早割」でネット購入した場合のみの特典切符とある。
みどりの窓口で確認したところ、一人が「J-West」の会員ならネットで3名分の切符を購入できるとのこと。
旅行の1ヶ月前に指定席特急券を予約し、引き続き「出雲・松江ぐるりんパスミニ」の購入ページに飛んで、無事に切符を購入できた。
私は翌12月22日から東京に移動するので、「寝台特急出雲」や、「米子から東京の通し切符の方が安い」など、帰りのルートは不確定要因が残ったので帰りの切符は保留した。
最終的には帰りも3人揃って「やくも」の指定席を「早得14」で購入した。
出雲・松江ぐるりんパスミニ
出雲・松江ぐるりんパスミニは、4500円だが、以下の区間、特急の自由席を含めて乗り放題なうえ、9施設の入場が無料になる優れものだ。
入館料は足立美術館2300円、水木しげる記念館700円、ぐるっと松江堀川めぐり1500円で、この3イベントだけで4500円になる。
2022年12月19日
特急「やくも」
早朝の「やくも」で松江市に向かう予定。
朝、猛烈に冷えこんでいて、しかも特急の入るホームは吹きっさらしで待合室もない。始発駅なので特急電車がすでに入線していると思って早めに着いたが、入線してきたのは発車時刻ギリギリだった。
「やくも」は倉敷から伯備線にはいり、山間部をゆっくり走っていく。単線なので対向電車が特急を待っている。
そのうち、沿線に雪がちらほら見え始め、いつの間にか猛吹雪になった。トンネルを抜ける度に積雪が高くなっていく。駅のホームも雪に埋もれている。「降車は4号車からお願いします」とのアナウンスが流れている。一体どうなるのかと思っていたら、トンネルを日本海側に抜けると吹雪は収まり、積雪も数センチになった。
電車が雪のため遅れ、米子駅で途中下野することにした。
米子駅はちょうどぐるりんパスミニの区間の端に位置している。
時間が押していることもあり、急遽予定を変更して、水木しげるロードと水木しげる記念館に向かうことにした。
境港線
米子から境線で境港駅を目指す。
米子駅には鬼太郎列車が停車していた。ホームも鬼太郎一色だ。
ちなみに山陰線は、コナン電車が走っていて、何編成か見かけた。
境線は、駅の間隔がすごく短くて、境港駅には結構すぐに着いた。
途中、コナン空港駅があった。空港に電車で行けるなら、空路も悪くない選択だ。
水木しげるロード
境港駅は、水木しげるロードとほぼ直結している。町の水木しげるへの入れ込みようは半端なく、水木しげる記念館までず~っと妖怪のブロンズ像や、妖怪公園、妖怪神社など、散歩客を飽きさせない構造になっている。
通りの両側には若者が経営する妖怪グッズや妖怪食の店舗が並んでいる。猛烈な寒波で観光客がほとんどいないにもかかわらず、通りの両側の店は開いている。シャッター通りとは縁遠い賑やかさfだ。
水木しげる記念館
水木しげる記念館に一歩足を踏み入れて驚いた。展示が充実している。
水木しげるは40歳まで苦労の連続で、勤め先をすぐに首になり、転職を繰り返していた。また、戦争で左腕を失ったことも記念館の展示で初めて知った。
水木しげるはゲゲゲの鬼太郎以外にも反戦ものや少女漫画など、さまざまなジャンルのマンガを描いていた。冒険家として世界中の妖怪を調査していたことも知った。
ゲゲゲの鬼太郎を視聴していなかった私は、妖怪には特に興味がなかったが、水木しげるの生き様はとても勉強になった。苦労人だったのだ。
昼食
昼食は、嫁さんがガイドブックで見つけていた、水木しげるロードそばの海鮮の美味しい食堂で海鮮丼をいただいた。
水木しげるロードの通りの両側にはさまざまなグッズの店と並んで、美味しそうなスイーツやチップスの店が軒を連ねていたが、水木しげる記念館に時間をたっぷりかけたので、電車のの出発時刻まであまり時間がなくなっていた。
この電車を逃すと1時間後だ。
結局、松江に出れば、県庁所在地だし何でもあるだろうということで境港駅をあとにした。
松江京店商店街
嫁さんがチェックしていた、松江の小京都と呼ばれる松江一の繁華街「松江京店商店街」に、寒風吹きすさぶ中徒歩で向かった。
「・・・・・・・」
午後4時ごろだったせいか、ほとんどの店にシャッターが降りている!
飲食店が軒を連ねる繁華街を想像していたが、飲食店が見当たらない!
結局何も食べないで寒風と雨の中、松江駅に向かうことになった。
「駅ナカなら何かあるよね」
「・・・・・・・」
駅ナカのそば屋は午後3時閉店でその日は終了。その後は開かない。
開いている飲食店は数えるほどしかない。
美味しい店を選択するどころではない!
結局、「しじみらーめん」を食べることになった。
嫁さんは貝アレルギーなので辛ラーメン
一同
「水木しげるロードには、入りたいお店、いっぱいあったね~」
なにわ一水
本日の宿は宍道湖畔の「なにわ一水」さん
素泊まりだったが、3人には広すぎるセミスイート風の部屋だった。
ホテルから「なんでも要望があればおっしゃってください」と言われた嫁さんが、バスの時刻表をお願いしたら、観光案内など大量のパンフレットを送っていただいたという、好印象の宿。
浴場は温泉だったが、残念ながらサウナや水風呂はなかった。
2022年12月20日
朝早くにホテルを出発。目指すは足立美術館。
松江駅に到着すると、列車が遅れているとのアナウンス。東京圏では列車の遅れといえば人身事故だが、こちらは単線なので、対向列車が1本でも遅れると連鎖して遅れるため、遅れは日常茶飯事で、10分程度だと「ラッキ~」という感じだ。
駅ナカのドトールコーヒーだけ開いていた。
ホテルの朝食を頼まないと、ほんとにモーニングを食べるところもなかなかない状況だということを理解する。
足立美術館
安来駅で特急列車を降りると、足立美術館の職員が改札前で待っていた。「ぐるりんパスミニ」を提示すると、「お待ちしておりました」と言って送迎バスまで案内してくれた。
遅れていた特急列車を待っていてくれたのだ。
数分の違いだが、あとに到着する普通列車を選択しなくてほんとうに良かった。
「みなさん、お待たせして申し訳ありませんでした」と言って、われわれの乗車直後に送迎バスは出発した。
足立美術館まで車で20分ぐらい、どうして駅前ではないのだろうと思ったが、その理由は後にわかった。
足立美術館は、20年連続で「世界の庭園No.1」に輝いている庭園が自慢。
庭園手入れの年間スケジュールを見ると、1年中樹木の剪定作業が行われていることがわかる。館内では剪定作業の映像も流れていた。
しかも、庭園外の借景した山に「那智の滝」をイメージした滝が流れているから驚きだ。
足立美術館の創設者が、画家を育てるために庭園を併設したという。
そういえば、「モネ」も、睡蓮を描くために睡蓮池を造園していたな。
足立美術館は苦難の時代を乗り越えて、今は拡張に次ぐ拡張で「廬山人」館や新館が立ち並んでいる。
足立美術館、全く知らなかった。
世界は広く深い
バスまで時間があったので、水木しげるロードで売っていて気になっていた「島根和牛ゴボウライスバーガー」を売店で販売していたのでいただく。
界玉造
嫁さんがチェックイン開始の3時にはチェックインしたいということで玉造温泉駅へ。
駅から玉造温泉まで徒歩で30分ほど。駅から本線を横切って欄干のある橋を渡り、歩行者・自転車用に造られたと思われる、本線と川を挟んだ道をまっすぐに行くと玉造温泉だった。
界玉造はすぐに見つかった。
午後2時過ぎに到着したので道路まで出てきていた仲居さんに荷物を預けて、チェックイン時間まで近場を散策する。
年配者向けのヘルスセンターのような施設「ゆ~ゆ」の売店を眺めたあと、
私は例によって足湯を見つけ、一番熱い場所に浸かってぼおっとして過ごした。
午後3時に界玉造にチェックイン
チェックイン手続きは部屋で行うのだが、午後3時から夜遅くまでさまざまなイベントが行われていて、外出しなくても宿泊客を飽きさせないプログラムが組まれていた。イベントは予約制もあるが全て無料。廊下の端々にコーヒーや紅茶などのフリードリンクが置かれた読書スペースなどがある。
部屋はセミスイートで広く、ベランダには露天風呂が備わっている。
茶室
3時30分の茶室を予約した。1回に4人定員で、私たち3人だけで亭主(女性)と向き合う。
期せずして正客が妻、末客が私になった。
抹茶は点てたそばから冷めないように飲むように勧められ、正客から順番にもてなされた。
主菓子は勾玉をイメージした練り菓子だった。
界玉造の廊下に大きな「めのう」の原石が飾られていたが、ここら辺一帯は勾玉の産地だそうで、「玉造」の名称の由来でもあるという。
亭主の話は優雅で、主菓子をいただいているときに、松江市内にある和菓子の美味しい喫茶店を教えていただいた。
温泉
温泉は、しっとりとして肌がすべすべになる感覚があった。
「なにわ一水」より、温泉成分が濃いのかもしれない。
残念ながらサウナや水風呂はない。日本酒と日本酒に浸す肌パックが置かれていた。温泉水に浸しても効き目があるそうだ。
露天風呂で、年配の方が「よく来られるのですか」と話しかけてきた。
「嫁さんが企画して、それについてきた」と話すと、
「私、全くどこに行くかも知らずについてきたら、もうびっくりですわ。娘が私と嫁にサプライズを用意してくれていて」
とても嬉しそうに娘自慢が始まった。
温泉から上がると水分補給のコーナーがあり、アイスキャンデーまで用意されている。。
こちらも全てフリーだ。
夕食
あっという間に夕食の時間になり、食堂へ。
カニづくしは前菜からデザートまで一点の隙もないできばえ。
各テーブルに専属の仲居さんが付いているので料理が運ばれるタイミングもぴったり。
嫁さんが貝アレルギーがあることを伝えていなかったのだが、かにしゃぶしゃぶの出汁がしじみ汁であることに気づいて仲居さんに告げると、「少々時間をいただきます」と言って、すぐに貝を使わない出汁を用意して持って来て下さった。
食事の感想は、「はじめに」で述べたとおりだ。
食後の日本酒飲み比べ
食後はこぢんまりとした和室で和服の若い女性に「日本酒飲み比べセット」でもてなしていただいた。
地元の酒蔵の42種類の日本酒から3種類1セット(つまみ付き)でいただくことができる。3人なら9種類を味わえる。
9種類ともはっきりした違いがあった。
いただいている日本酒の説明を受けながら味わう酒は、優雅と贅沢の極みだ。
神楽
ベランダにある温泉に浸かってゆっくりしたあと、午後9時から、地元に伝わる「やまたのおろちとスサノオの尊」の神楽の上演サービスがあった。
それにしても宿泊客に小さな子連れ、しかも2人とか3人とかの子連れ客が多い。日本経済新聞の「20代、30代の富裕層が増えている」記事を実感した。
2022年12月21日
早朝から、露天風呂でゆっくりしたあと、
フロント前の「相撲体操」にも参加した。
体を徐々に慣らしていき、最後は相撲の四股を踏んで終わる。
めったに動かさない筋肉を動かして、朝から爽快だ。
朝食
朝食も、趣向が凝らされていた。
焼き魚は「紅鮭」ではなく「のどぐろ」
汁は「味噌汁」ではなく「しじみ汁」
嫁さんの椀はちゃんと「味噌汁」に変わっていた。
界玉造では、地元の厳選された食材にこだわっているそうだ。
午前11時30分までホテルでゆっくり過ごして、チェックアウトした。
担当した仲居さんが道路まで付き添って見送って下さった。
松江堀川めぐり
玉造温泉駅から松江駅に移動し、「松江レイクラインバス」で堀川めぐりを目指す。「松江レイクライン」は、松江の観光案内ビデオが流れていて、大変お得だ。
このまま一周乗車していたかったが、時間も限られているので「堀川めぐり」乗船場で降車した。
凍える寒さのため、「堀川めぐり」は空いていた。乗船客は私たちの他に一人だけ。船頭さんの語りが饒舌で、松江城の石垣の話や小京都の話など、50分間、全然飽きさせない。船内には練炭こたつが設置してあり、こたつに足を入れればぬくぬくだ。
松江城
茶室で亭主から「松江城は、階段が急で転げ落ちそうになる」と聞いていたが、全然たいしたことはなかった。松江城は、標高30mの丘に高さ29mの城を建てたと船頭さんから聞いていたのだが、確かに天守閣から町が一望できた。松江城の最上階は正方形のきれいな居室で、中央には柱がなく、居住性抜群の仕上がりになっていた。ここに殿様が住んでいたのか。
ところで、トイレはどうしていたんだ?
まさか、城の庭に厠があったとか?
喫茶きはる
帰りの電車は午後5時発なのでどこかで食事か喫茶をして時間を潰そうと思っていたのだが・・・
ない!「飲食店」が見当たらない!
船頭さんから「電柱さえない美観地区で、時代劇のロケによく使われる」と聞いていた武家屋敷の通りを歩いていると、松江歴史館の前に出た。
おやっ、これは、茶室の亭主が言っていた「喫茶きはる」!
松江歴史館も入場無料だったのだが、寒くてのんびりしたかったのでとにかく喫茶へ!
抹茶セットや、ぜんざいをいただき、いい感じの時刻までゆっくりと過ごした。
おわりに
雪で頻繁に電車が遅れることがわかった。われわれは寒波第一波に見舞われてもなんとか電車が動いてくれたが、
クリスマス明けの第2波は、完全に運休になったようだ。
冬の旅行は、要注意だと肝に銘じておこう
国内・国外を問わずずいぶんあちらこちらに出かけていったつもりだったが、島根県と鳥取県は今回初めて訪問した。
スケジュールは家族任せだったので楽をさせてもらった
ただただ感謝しかない
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